4月10日(Tutti。ペヤーチェヴィチの練習を始めるにあたって)
この曲をこのオーケストラが取り上げてくれたことを感謝します。この曲はブラームスやチャイコフスキーと同じく、後期ロマン派の流れに属しています。ショスタコーヴィチの交響曲のように深みのある、重い曲ではありませんが、美しいメロディーに富んだすてきな曲です。もちろん、世界的に知られた名曲というわけではありませんが、私の祖国・クロアチアの曲では傑出したものの一つです。ペヤーチェヴィチとショスタコーヴィチ、この2曲の組み合わせが第30回演奏会に大成功をもたらしてくれるものと信じています。

(ショスタコーヴィチの第4楽章)
この楽章の演奏でよく見られる間違いは初めから速いテンポで演奏してしまうことです。最初は踏みしめるような遅いテンポ、そのかわり常に少しずつ速くしていき、最後には速くなります。最初は重々しく、ということを覚えていて下さい。

4月24日(弦分奏。ショスタコーヴィチの第1楽章の練習)
この曲では、人間にとって最も劇的なシーンはピアニシモ(最弱奏)で書かれています。しかも、それは非常に個人的なものです。大勢の人々の激情ではなく、孤独な、ただ一個人の、心の最も深い部分の感情です。フォルティシモ(最強奏)ではこれを表現することはできません。

6月26日(Tutti。ショスタコーヴィチの第3楽章。オーボエが第3主題をかなでる)
ここはまったくひとりの、孤独な人間を表しています。スターリンの体制下、抑圧され、言いたいことも言えず、楽しみも奪われ、まったく孤独な人間。ここにいるのは複数の人間ではありません。ただ、ひとりなのです。そのように演奏して下さい。

7月3日(Tutti。ペヤーチェヴィチの第4楽章の練習)
皆さんがペヤーチェヴィチのCD(クロアチアより取り寄せたもの)をよく聞いていることがわかります。しかし、私はあの演奏とは違う解釈を持っています。4楽章は非常に速く演奏されることが多いのは事実です。しかし、私はあえてテンポを抑えて演奏します。なぜか。テンポを速くすると細部は聞き取り不可能となり、不完全な出来でもそれらしく聞こえるのです。それ故、プロのオーケストラでも練習時間がないとむしろ速く演奏します。このオーケストラではゆっくり演奏をし、そのかわりナイスな(注:英語niceには、精妙な、厳密な、という意味とすばらしい、という意味があります。ここでは後者の意味で使われていると思いますが、あえてカタカナ言葉に逃げました)ものにします。あなた方ならできるはずです。本番前になってもしできていなければ、そのときは速く演奏しましょう。