| 「いえ・・・
懺悔などする気はありません。 それよりも恋人宛に一筆したためさて頂きたいのですが・・・」「う〜ん、規則上それは・・・
恋人の名前は”ピーチ”だな・・・」「では、私の唯一の財産であるこの指輪を差し上げますから・・・」「(周りを見て誰もいないのを確認して)ま、まあ、特例としていいでしょう。ささ、どうぞ・・・
”キノコくれぇ”とでも書くのかな・・・」 |
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カヴァラドッシは看守の机の上に座ると、トスカに宛てて手紙を書き始めた。
が、数文書いてから、筆の方はまったく進まなくなった・・・
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「(ああ・・・! だめだ・・・!
あの愛おしい日々の思い出が俺の頭を駆けめぐってやがる・・・
くそ!くそ!くそぉー!
俺の心はこんなにまで弱かったのか・・・
ああ、愛が俺に後悔の念を、生への執念を呼び起こすのか・・・)」
|
そして、居たたまれなくなったカヴァラドッシは立ち上がり、夜空を思い起こすように、斜め上を向いて二人の愛の思い出を切々と歌い始めた・・・
<星は輝きぬ>
(演奏箇所:練習番号11番1小節目〜13番6小節目まで)
(注意:MIDI音源によっては音色等が変わるかもしれません。)
| 「星は輝いていた・・・ (マウスポインタを右の絵の上に置いてみてください)僕の家の前で抱きしめ合い、キスした・・・
あの感触、あの愛おしさをもう感じることはできないのか・・・
あの日々はもう戻ってこないのか・・・
ああ、俺は今絶望の中に死んでいこうとしている・・・!
人生がこんなに愛おしいものだったとは・・・!」 |
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そう言い終わって、カヴァラドッシは思い余って顔を伏せ、泣き始めた。
「(う゛おぉぉぉお〜ん! まだ死にたくねえよ〜!)」
と、そこへ誰かが駆けてくるような足音がした!
カヴァラドッシがハッとして振り向く!
あの愛らしい姿!ほのかに赤らんだその顔!
涙を浮かべたその黒い瞳! 黒く艶やかに光るその髪!
紛れもない!
トスカ・・・!
フローリア・トスカだ!
もう声も出なかった・・・
カヴァラドッシとトスカはお互いに駆け寄り、そして激しく抱き合って情熱的なキスをした!
「おいおい・・・
後ろには俺がいるんだけどなぁ・・・」
その後ろには、誰も見ちゃいないスポレッタがいた・・・
「(城内警備兵に向かって)よし、一応引き下がるぞ!
二人の最後のデートだ!邪魔してやるな・・・!(くそぉ〜
うらやまぢぃ〜!)」「いやぁ〜粋ですなぁ〜」「ほんに、ホンに・・・」
城内警備兵とスポレッタは二人の見えないところまで引き下がった。
すると、トスカは見計らったかのように、突然一枚の紙切れをカヴァラドッシに見せた。
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「”フローリア・トスカと同行の騎士の自由通行手形!
チヴィタヴェッキアからお好きなところへ何処へでも行ってちょーだい!
ローマ警視総監ヴィットリオ・スカルピアの保証付き!”
こ、これは!」
「そう! 私たちは自由なのよ!」
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「(怪訝そうな顔で)し、しかし、スカルピア・・・!
あいつが・・・ 初めての慈悲なのか・・・?」
「(顔を強張らせて)そう、そして最後の・・・!」「えっ!?」
トスカは、カヴァラドッシ連行から今までの経過を、まるでVTRの早回し再生のように、まくし立ててしゃべり出した!
「あの変態オヤジは私の体を求めて近づきこう言ったの!”わしの女になったら恋人を助けてやる”と!
私は神様に助けを求めた・・・!
でもダメだったの・・・ そして断腸の思いで私は条件をのんだわ・・・!」「じゃ、じゃあ、まさか・・・!」「・・・で、絶望に暮れる私の前に1本のナイフが光っていたの・・・
まるで”俺を使え!”と言わんばかりに・・・」
「そして・・・ あの変態オヤジがスケベ丸出しで私を抱きしめようとしたその時・・・!
私はナイフを奴の心臓に突き刺してやったのよ!」「な、な・・・ト、トスカ・・・
君は・・・」
(マウスポインタを右の絵の上に置いてみてください)
「(トスカの手を握り)君は・・・
その柔らかで・・・
清らかな手で・・・ 俺のために・・・
すまぬ・・・」「いいの・・・
これで自由だもん・・・
もう誰にも邪魔はされない・・・」
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そして、トスカは突然カヴァラドッシの手を離して、これからの「作戦」についてしゃべり始めた。
「で、マリオ! これからあなたは”死ぬ”の!
でも、偽りでね・・・
明確に恩赦を与えられないからだって!
そう、これから始まるのは”な〜んちゃって銃殺刑”なの!
もちろん玉は空砲ばっかりで、あなたはわざとらしく英雄のように”死ぬ”のよ!」
「(信じられない様子で)そ・・・ そうか・・・」
「そう!
そして”死人”となったあなたは自由の身!」「自由の身・・・」
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「そして、私たちは手に手を取って寄り添いながら、船で大海原に出て、二人の理想の世界へと旅立つのよ・・・!」「海へ・・・
理想の世界へ・・・!」
「そこには何の縛りもなく、自由が待っているの・・・!」「自由・・・!
俺が追い求めていた・・・!」
|
「さあ、マリオ! 歌いましょう!
二人でよく歌っていた、あの”讃歌”を!」「あぁ・・・!」
「(二人同時に)意気揚々たる勝利の凱旋!
天上の炎に魂が打ち震える!
そして魂は調和のとれた飛翔の内に愛の陶酔へと羽ばたく・・・」
(カーン! カーン! カーン! カーン!)
午前4時を知らせる鐘が鳴った。カヴァラドッシの死刑執行時刻である!
「お取り込み中誠に失礼ではございますが、お時間です・・・」
看守が知らせに来た。
「さあ、行って来るよ・・・」「ええ、ちゃんと”死ぬ”のよ!
私が合図するまで動いちゃダメよ・・・!」「ああ、俺のトスカ・・・
もっと声を聞かせてくれ・・・ 何かもう聞けないような気がして・・・」「もう、何言っているのよ!
ちゃんと、英雄のようにカッコよく”死ぬ”のよ!」「(あきれたように笑顔で)ハイハイ、分かりました・・・!」「もう、ちょっと真剣になりなさいよ!」「(わざとらしくビシッとして)ハイッ!」
そして、カヴァラドッシはサン・タンジェロ城の屋上、所定の位置に立った。
銃殺兵がカヴァラドッシの前に並ぶ中、トスカは離れたところに立って、じっとその様子を見守っていた。
「(あ〜 ドキドキするわ〜
”な〜んちゃって”と分かってんのに、なんか・・・
あ〜こんなんがずっと続くような気がするわ・・・)」
そして銃殺兵が所定位置に着き、脇に立つ下士官が指揮棒を上げると、一斉に銃を構え始めた!
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「あ〜 マリオ〜
ごっついカッコええわ〜 そうや、英雄のように・・・!
カッコよく・・・! 死ぬんやぁぁーー!」
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下士官が指揮棒を降ろした!
(ズダダダァァァーーーーン!)
一斉に銃声が鳴り響き、カヴァラドッシは崩れるように倒れた!
「(すごぉぉーい! ホンマに死んだみたいや!)
ブラヴォー! マリオー!」
下士官は、カヴァラドッシが息絶えたのを確認するために近づき、とどめを刺すべく短銃を撃とうとしたが、下士官の脇にいたスポレッタがそれを止め、自分のコートを掛けてその場を離れるよう下士官に指示した。
下士官はそれを受けて、兵士たちに退場の指示を与え、一緒にその場を立ち去っていった。スポレッタもそれに続く。
「(よっしゃ・・・ まだ動いたらあかんで・・・
マリオ・・・)」
カヴァラドッシはトスカの指示通り、死んだようにピクリとも動かない・・・
そして、誰も見えなくなったところで、トスカはカヴァラドッシの下に駆け寄った!
「さあ! マリオ! もういいわよ! 起きて、起きて!
・・・て、どうしたのよ! もういいのよ・・・!」
トスカはそう言って被せてあったコートを剥いで中を見た!
すると、そこには血だらけで本当に死んでいるカヴァラドッシの亡骸があった!
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「あぁーーー!
ウソや、ウソや!
そんな・・・ マリオ! マリオォォォーーーー!
うちをおいて・・・ そんなぁぁーー!」
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トスカの悲鳴と同時に、下の方から男たちの騒がしい声が聞こえてきた。
「スポレッタ!殺された・・・!」「シャルローネ、何だ?誰が?」「スカルピア閣下だ!」「何いぃぃぃーーーー!」「そうだ!そうだ!殺された!ファルネーゼ宮殿の執務室で!」「間違いない!
犯人はトスカだ!」「降り階段を固めろ!逃がすな!
捕まえろ!」
スポレッタ、シャルローネ、そして多数の警官隊が処刑場になだれ込んできた!
「いたぞ!待て!」「トスカ!
よくもあのお方を・・・!
この代償はデカいぞ!」
「やったらウチの命で払ろうたるわ!」
そう言ってトスカはその場から逃げると、城壁の上に立って高らかに叫んだ!
| 「おぉぉぉーーー!
スカルピアァァーー! 神の御前で!!」 |
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そしてトスカは城壁の下に身を投げた!
突然のことに茫然としてしまったスポレッタ、トスカが身を投げた城壁に行って下を見下ろすシャルローネ、トスカの墜落場所に向かった警官隊・・・
始まりからたった24時間、しかし余りにも凄惨な悲劇はあっけなく幕を閉じた・・・
<終>