ライトモチーフ(示導動機)とは?

楽曲の中で、特定のイメージと結びつけられたメロディーのことです。では、「ジャジャジャジャーン!」は、「運命」のライトモチーフか?というとそれは違います。ライトモチーフとはもっと更に様々なモチーフが有機的に組み合わされて、音楽の進行の中にストーリー性やドラマを与えるものを指します。例えば、映画音楽で、特定の登場人物のテーマが決まっていて、(スターウォーズなんかを思い出すといいかも知れません)、登場人物同士のカラミのシーンではそのテーマも絡み合うってヤツ。アニメのSFものなんかでもよく見ますけど、大体あんな感じのものです(そういや、ああいうジャンルは「スペース・オペラ」っていうんですよね)。ただし、オペラで用いられるライトモチーフはもっと微妙なものですけど。

<ライトモチーフの歴史>

ベートーヴェンが「ジャジャジャジャーン」に何のメッセージを込めたのかは分かりませんが(運命はこのように扉を叩く、と言ったというのはフィクションです)、交響曲第5番に繰り返し現れるこのモチーフには何らかの意味があるのでしょう。このように、モチーフに意味を込めるということはかなり古い時代からやられていました。しかし、古典派の時代では音楽の進行そのものは、ソナタ形式といった一定の様式に従っていて、モチーフ自身が音楽の進行を左右するということはありませんでした。

続くロマン派の幕開けとともに、ひとりの革命児が常識を破る手法で交響曲を書きました。彼の名は、ヘクトル・ベルリオーズ。その曲は、「幻想交響曲」と名付けられています。

なんと彼は、自分の失恋の痛手をもとに、ひとつの物語を交響曲の中に描き出したのでした。その中で彼が用いた手法が「固定観念」です。
幻想交響曲の中では、あるひとつのメロディー(これが「固定観念」なのですが)は、彼の思い人であるある女性と等価なのです。彼が初めて彼女に出会ったとき、舞踏会で垣間見たとき、田園でひとり彼女を思うとき、彼女を殺した罪で断頭台の露と消える瞬間の走馬燈のごとき追憶で、死後、魔物たちとの馬鹿騒ぎの中で、「固定観念」は少しずつ、あるいは大きく姿を変えて現れます。しかしどれも、同じひとりの女性を表しているのです。
このときのベルリオーズの頭の中には彼女のことしかなかったのでしょう。ですから、テーマはひとつでよかったのです。

これを発展させ、ライトモチーフに仕上げたのが、こちらもオペラ界の革命児、リヒャルト・ワグナーです
。ワグナーはオペラをあらゆる芸術の融合したものであると考えました。ですから、ストーリーと音楽が別個に進行することがあってはならないと考えました。そこで、あらゆる登場人物、感情、理念、物体にテーマを決め、音楽自体にストーリーを雄弁に語らせることにしたのです。これによって、音楽とストーリーの一体感を高めるとともに、せりふでは伝わらない様々な伏線を張ることが可能になりました。

プッチーニはこのワグナーの手法と、ワグナーと同年生まれののイタリアのオペラ作曲家、ヴェルディの作風を継承し、独自のスタイルを築いたのです。