スペイン・アンダルシア地方のとある村にて
−村祭りの日(昼さがり)−
盛大な太鼓の音、「オーレ! オーレ! オーレ!」と囃し立てる声、騒々しく打ち鳴らされるカスタネットの音、そして人々の華やかな踊りが、祭りの雰囲気を大いにもり立てていました。
また、どこからともなく、カサディータ(おかみさん)の歌が聞こえてきます・・・
「おかみさん、おかみさん、
入り口に閂(かんぬき)をおかけなさい・・・
悪魔は眠っていても目を覚ましますゆえ・・・」 |
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− − −
さて、ところ変わって、ここは村はずれの水車小屋。
そこには、ルックスは今ひとつだが働き者の粉屋ルーカスと、亭主と違って村一番の美人と評されるルーカスの女房フラスキータが住んでいました。
ルーカスは家の庭で鳥かごを前に困っている様子です。
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「う〜ん。 困ったなあ〜
ロリート(九官鳥の名前)のやつ、時間通りに鳴いてくれねえんだよ〜
今は2時なのに3回鳴くんだよなあ〜
チクショー、もう一回だ!
(2回口笛を吹く)」
「ピ〜ヨ、ピ〜ヨ、ピ〜ヨ、ピ〜ヨ」
「(キレる)このヤロー!
パセリ食わしたろうかー!」 | その様子を見て女房のフラスキータはケラケラ笑い始めました。
「あはははっ・・・ あんた、力業じゃだめよ。
こういうのは頭を使わないとねっ!」
といって、フラスキータは庭になっていたブドウを一房もって、鳥かごに近づきました。
「(ルーカスを押しどけて)ハイハイ、どいたどいた!」
「(ブドウを1粒ロリートにあげて)はい、お鳴き!」
「(1粒食べて)ピ〜ヨ」
「(ブドウをもう1粒ロリートにあげて)はい、もう1回!」
「(もう1粒食べて)ピ〜ヨ、ピ・・・」
「はい、おしまいっ!(ドスの利いた小声で)に、せえへんかったら焼き鳥にするぞ、コラ!」
「(すごくビビって)ピ、ピ、ピ・・・(黙る)」 |
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なんと、あれだけルーカスのいうことを聞かなかったロリートが女房の機転(?)で、見事に時刻通りに鳴いた!
「ねっ! どう?
やっぱり力ずくじゃだめよっ!」
(どこがやねん!)
ルーカスはすっかり感心して思わず自慢の女房に抱きついた!
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「(感動して)すごい!
すごすぎるよ〜! フラスキータ!」
「でしょ? うふっ。」
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と、イチャついているその時、
この地方の代官が夫人や供の者を連れ、偉そうにふんぞり返って行進してきました。
「あれっ?
代官のやつ、外国視察から帰って来たのかよ。まったく、相変わらずのバカ面だぜ!」
「まあ、その視察って、単に遊んできただけなんでしょ?
税金使って・・・」
「一応挨拶しておくか、”お代官様”に・・・」 |
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「いやぁ〜 面白かったのう。」
「ええ、まったく。外国旅行を許可してくださるなんて、国王陛下もお心の広い方なんでしょう・・・」
「ま、まったくじゃ。ワ、ワハハ・・・(って、実は海外視察ってウソついたんじゃが・・・)」
と、代官が先の方を見ると、ルーカスとフラスキータが挨拶するべく待っているのが見えるじゃありませんか!
「(おお〜
あれに見ゆるは当代一の美人と評されるフラスキータではないか!
おお〜 もっと近くでその顔を見たいの〜
よし、イヤーゴがハンケチを使ったようにワシもこの手袋で・・・)」
と、わざとらしくフラスキータの前で手袋を落とし、彼女がそれを拾って代官に差し出すと・・・
「(おお〜 間近で見るともっと美しいのお〜
よし、ワシのモノにしてくれようぞ!)おお、すまぬのう。(フラスキータの手に触れて、何かに取り憑かれたかのように)ああ、なんと冷たい手だ・・・
私の手で暖めてあげましょう・・・」
「(さっと手を引いて)い〜え、結構ですわ。お代官様、私冷え性ではありませんし・・・」「(しつこく寄ってきて)まあ、ワシの身の上話でも・・・」
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その様子を見ていた代官夫人が怪訝そうに代官を問いただしました。
「あなた、ちょっとなにしているの!」
「え、え、い、い、いや〜
な、なに、何じゃな・・・
(ルーカス夫妻の方を見ながら)で、では、また会おうぞ、忠実なる民よ!」
「(ふ〜 助かったわ・・・)」
「(ウザいんだよ! このエロオヤジが!)」 |
やっと、代官一行は町中へ去っていきました。
が、そこに1枚の紙切れが落ちていました。どうやら観光案内のチラシのようです。
読んでみますか?(話の流れ上では、別に読まなくてもいいですけど・・・(^^;)
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