ブラームス交響曲第3番 ヘ長調
−第1楽章の解説−


関西シティフィルハーモニー交響楽団
第31回定期演奏会の演奏より
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第1楽章の形式は提示部、展開部、再現部などからなる「ソナタ形式」である。

交響曲の開始を、そびえ立つ尖塔のような音(譜例1)が宣言する。「Frei aber froh(心のままに、しかし豊かに)のテーマ」とされるこれは、ブラームスの座右の銘をドイツ音名で――ファ・ラ♭・ファをF・As・Fで――表したものだといわれている。このあと登場する第1主題を常に先導し、幾多のフレーズを産み出す種子となり、壁紙のように控え目に背景を埋めたりもする、この曲の顔にして背骨である。


  

この「F・As・F」を低音部にしたがえ、第1主題(譜例2)が悠然とその一歩を踏み出す。雄渾な旋律線が広い音域を勢いよく上下するさまは、山や谷や海さえものともせぬ大巨人の歩行を連想させる。だがそういった勇壮な空気も、優しくなでるような新しいフレーズ(譜例3)が第2主題を誘い出す過程にあっては、何らの違和感なく穏健なものへと変容してゆく。

こうした経過のうちに登場する第2主題(譜例4)は、



狭い音域の中の限られた音ばかりを連ね、第1主題とはまるで対照的な温和な表情をたたえている。ところが第1主題の威圧が失われたせいであろうか、束縛をきらうかのような気ままな木管のフレーズ(譜例5)が踊り出るや、

音楽は錯綜の一途をたどり、ついには何拍子なのかさえ聴き手の耳には判然としないリズムの袋小路(譜例6)に迷いこむ。

曲の顔である「F・As・F」と、重要な2つの主題を紹介したここまでの部分は「提示部」と呼ばれる。――作曲者は以上の部分の繰り返しを楽譜上に指示しているが、実行は指揮者の判断に一任されている。

続く展開部の題目は、2つの主題をさまざまに変容させることにある。微笑をたたえていた第2主題が、情熱ほとばしる激しい性格を帯びて再登場すれば(譜例7)


かつてはうららかであったフレーズも、行き場を失って迷いを顕わにし(譜例8)

そびえ立っていた「F・As・F」もぐっとメロディックに優美に流れる(譜例9)、といった具合に、主題が秘めていた別の情趣が引き出される。

楽章はこのあと、すでに体験した提示部の音楽をもう一度なぞる「再現部」をへて、「終結部」へと続いてゆく。終わり近くでは第2主題に由来する新しいフレーズ(譜例10)が披露され、次の楽章の空気が準備される

 

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