オペラ「蝶々夫人」の大まかな骨子は、第1回に解説した通りで、15歳の元芸者の蝶々さん(蝶々夫人)が、アメリカ海軍士官のB.F.ピンカートンとの(ピンカートンの駐日中の慰み者を得るための)戯れの結婚を本気で信じたことで起こった悲劇です。
ピンカートンの子供まで産んで3年間待った挙げ句の果て、裏切られたことを知った上に、子供まで夫(とその本妻)に取り上げられ、自分の名誉を守るため亡き父の形見の短刀で喉を突き自決する・・・
このあまりに切ない悲劇は、別の記事でも載せておりますが、ロング作の小説、ベラスコ作の戯曲、プッチーニ作曲のオペラ、全てが大ヒットしました。(もちろん現代まで圧倒的な人気を保っているのはオペラだけですが・・・)
では、このオペラ「蝶々夫人」の実際のあらすじがどうなっているのか、キーポイントなる音楽(音楽による各種テーマ)も交え、簡単に解説しましょう。
(注意!)この「あらすじ」はストーリー解説を優先するため、実際のオペラの台詞と話が前後することがあります。
<場所設定>
19世紀末の長崎(おそらく1890年前半と考えられます。)
長崎港を見渡せる丘の上の日本家屋とその庭
おそらく下の写真のような光景が見られる所だったんでしょう。
この場所設定は全幕を通して変わることがありません。
(オペラ史上最も場所転換を必要としないオペラの一つです。)

<19世紀末の大浦天主堂の裏から眺めた長崎湾と港>
所蔵:長崎市立博物館
(許可を得て転載)
現在の長崎湾と港(筆者撮影)
<第1幕>
前奏曲
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障子と木造の骨組みで出来た華奢な日本家屋、蝶のように可憐な日本女性、日本式の結婚・・・
一人のヤンキー・バガボンド(アメリカのさすらい者)から見れば、日本の全てがほんの一時の「儚きもの」でしかなかった・・・
しかし、それは後に大きな過ちとなり、「酷き運命(さだめ)」となって、か弱き蝶を死の闇へ、そしてさすらい者を激しい後悔と自責の念へと巻き込んでいく・・・
幕開けの流れるような激しさで演奏される前奏曲は、「儚きもの」と「酷き運命」を象徴するのでしょうか・・・
そして、その音楽が嘘のように静まり返って、この悲劇の本編・・・海軍制服に身を包んだ軽薄そうなアメリカ人と、下衆な商人根性丸出しの卑屈な日本人、この二人の男が、唯一の舞台となる日本家屋にやってくるところから始まります。
任務により日本の長崎に来たアメリカ海軍士官
B.F.ピンカートン (原作〜オペラの変遷はこちら)は、日本での任期中の退屈さを晴らせるように、日本家屋と現地妻の調達を斡旋人の日本人ゴロー
(原作〜オペラの変遷はこちら)に頼んでいました。
その日は、実際に家に移り住んで、ゴローお奨めの日本女性と(偽りの)結婚式を挙げる予定になってます。
この「紙と木でできた家は大丈夫か」というピンカートンに対して、ゴローは「塔のように頑丈です」と答えて、得意満面にスズキら家の使用人を紹介し、結婚する予定の日本女性(蝶々さん)とその親族について喋ります。
ピンカートンが勝手にべらべら喋る使用人のスズキや、ゴローの過剰なまでの慇懃さにうんざりしてたところに、坂道の急さと路面の悪さに文句を言いながら在長崎アメリカ領事のシャープレス
(原作〜オペラの変遷はこちら)が家を訪れます。
シャープレスのテーマ
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シャープレスは花嫁となる蝶々さん
(原作〜オペラの変遷はこちら)の可憐さを述べて、彼女は今度の結婚を本気に考えているから、よく謹んで考えるようにとピンカートンに忠告しますが、
シャープレスの忠告のテーマ
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当のピンカートンはまったく意に介せず、「アメリカのさすらい者は行く先々で色んな物を味わうもの」「日本は家(障子で隔たりが動く)も女(金で買える)も自由自在」「アメリカ人の本妻となる女性に乾杯!」と自分勝手な軽薄な論理を展開します。
さて、そうこうしているうちに丘の下から蝶々さんとその女友達が若やいだ話し声を響かせながら登ってきます。
愛のテーマ
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結婚の儀式の準備が整うまでの間に、蝶々さんは誉れ高き武家の娘から家が落ちぶれ、食い扶持のために芸者となった自分の身の上を語ります。
没落のテーマ
(越後獅子)
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シャープレスは蝶々さんに家族のことを聞きますが、「父親は死んだ」と言った瞬間、(一瞬ですが)不気味な暗い雰囲気が立ちこめます。
死のテーマ
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それを払拭するかのように、シャープレスはすかさず蝶々さんの年齢を聞いたところ、「15歳よ、でももうトシよね」と答えられて、ピンカートンと共に思わず「まだ子供じゃないか!」と驚いてしまいます。
そこへ、蝶々さんの親族、友人や結婚式を行う神官、戸籍係の役人も勢揃いして、いよいよ儀式の準備が整ってきました。
「君が代」
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親族や友人達はピンカートンや蝶々さんを見て、
「ま〜王子様みたい」(by
蝶々さんの母親)
「え〜かっこよくないじゃん」(by
蝶々さんの従姉 その1)
「ゴローのやつ私にもあのアメリカ人を勧めたのよ」(by
蝶々さんの従姉 その2)
「こいつら絶対そのうち離婚だな!」(by
蝶々さんのいとこ達)
「そうだ、なっちゃえ!なっちゃえ!」(by
その他大勢)
「おい、酒!酒はどこだ!」(by
蝶々さんの叔父のヤクシデ)
などめいめい勝手なことを言ってます。
この光景を見て、改めてシャープレスはピンカートンを祝うと共に、蝶々さんの誠意を踏みにじってはいけないと警告します。
そして、次にピンカートンが蝶々さんの持ってきた品々を見ていろいろ聞きます。
(蝶々さんが持ってきた品々の詳細)
「さくらさくら」
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そのうち、大事そうに持っている短刀について聞くと、途端に蝶々さんの顔が曇り、「人が多すぎます、お許しを・・・」と言われてしまいます。
短刀のテーマ
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直後にピンカートンはゴローから、この短刀は父親が天皇から賜ったもので、父親は勅命に従い、その短刀で切腹したことを聞きます。
蝶々さんは愛する人のために自分が祖先の信仰を捨て、アメリカの神を信仰すべく、教会へお祈りに行き改宗した事をピンカートンだけに告白します。
(その告白の最後に「死のテーマ」が強奏され、暗い影が投げかけられます。)
結婚の儀式が始まり、祝詞に続いて(もちろん形だけの)結婚証明書へのサインも済ませると、(形だけの)婚姻成立!
「これで『蝶々夫人』ね!」という女友達に対して、「あら、『B.F.ピンカートン夫人』よ!」と可愛く否定する蝶々さん。
「B.F.ピンカートン夫人」のテーマ
(お江戸日本橋)
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儀式の後、シャープレスが「慎しむように。」とピンカートンに忠告して去ると、この場にはピンカートンと蝶々さん、そして親族、友人達だけとなります。
仰々しい神官や役人、うるさい領事が居なくなって、一息ついたピンカートン、さあみんなで乾杯だと言って、披露宴となったその時!
空気の張り詰めたざわめきと、「ゴォ〜ン」と重々しい梵鐘の音!
「蝶々さん・・・!
蝶々さん・・・! おお、なんと禍々(まがまが)しい事じゃ!」
叔父のボンゾー(僧侶)
(原作〜オペラの変遷はこちら)です!
その声は憎しみを込めた呪いの声となって轟きます!
呪いのテーマ
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祖先の信仰を捨て、キリスト教に改宗した蝶々さんを恫喝し、改宗を知って驚き怒る親族や友人を集めて、
「お前が我等との縁を切るなら、我等もおまえとの縁を切る!」
と絶縁を告げて、皆去っていきます。
突然の衝撃に怯えて泣く蝶々さんをピンカートンは優しく慰めます。
そして何とか立ち直った蝶々さん、ピンカートンに自分がアメリカ流と思っている最高の敬意(手に口づけする)を示して、ピンカートンの誠意に応えます。
夕方から、夜になった月夜に、二人は長い愛の睦言(愛の二重唱)を交わします。
蝶々さんは自らを「月の女神」に例え、「貴方を一目で好きになりした!」と愛を告白しますが、その直後にボンゾーが残していった「呪い」が蝶々さんの頭をよぎるのです!
愛の二重唱の最中で出る呪いのテーマ
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でも、それも一瞬のこと。
さらに長い熱い睦言を交わした二人は愛の住処へと入っていくのです・・・
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