(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

歌劇「ナブッコ」

−その2:オペラのストーリー−

<登場人物について>
−ナブッコ王と2人の娘、ユダヤ人たち−

主な登場人物は以下の7人で、ほか合唱の役として、バビロニア兵、イスラエル兵、イスラエルの神官、イスラエルの民衆(バビロニアの奴隷)などがあります。

ナブッコ(ナブコドノゾル)( バリトン ):バビロニアの王

このオペラの主役(タイトルロール)となっているバビロニアの王で、旧約聖書ではネブカドネツァル、史実ではネブカドネザル2世のことです。
(「ナブコドノゾル」は「ナブッコ」の正式名称で、オペラの初演当時は、このタイトルになっていました。)
ナブッコ王はバビロニア古来の神であったベルを信仰し、イスラエルの民の信仰(後のユダヤ教)とその神エホヴァ(ヤハウエ)を蔑んでいます。
彼は第1幕でエルサレムに侵攻し、人質となっている娘フェネーナを救出すると共にエルサレムを破壊、イスラエルの民を捕虜として連行します。
その後、エホヴァの神罰により発狂し、もう一人の娘のアビガイッレに王位を奪われそうになりますが、ナブッコ王は死刑になるフェネーナを救いたい一心でエホヴァに許しを請い、正気に戻って王位を奪還、イスラエルの民の帰還を許し、称賛を浴びることとなります。

フェネーナ( ソプラノ)ナブッコ王の正妻の娘

ナブッコ王の正妻の娘で王の後継者とされているバビロニアの王女ですが、なぜかエルサレムに人質としてかくまわれており、さらには祖国の信仰を捨てて敵国の神エホヴァに帰依し、さらにはイスラエル(南ユダ王国)最後の王ゼデキヤの甥であるイズマエーレと恋仲となっています。
彼女はナブッコ王によってエルサレムから救い出されますが、その後イスラエルの民を救おうとしたことが王位を狙うアビガイッレにばれたために、反逆の罪で処刑されそうになります。
そして、まさに処刑されようとした瞬間に、正気に戻ったナブッコ王によって再び救い出され、無事にハッピーエンドを迎えます。
まさに矛盾だらけの存在の彼女ですが、彼女の存在がなければこのオペラの話の筋道が通らなくなるという、重要な役なのです。

アビガイッレ(ソプラノ): ナブッコ王と奴隷の間に生まれた娘

バビロニア国民からは(正当な王位継承権を持つ)ナブッコ王の先妻の娘と信じられていますが、本当はナブッコ王が奴隷に生ませた娘で、アビガイッレ自身はオペラ中にその事実を知ることとなります。
彼女もフェネーナと同様になぜかイズマエーレを愛していたのですが、フェネーナと違って彼に受け入れてもらえなかったために、その反動で彼と彼の属するイスラエルの民に激しい憎しみを抱きます。
アビガイッレは自分の出生に関する事実を知った後、ナブッコ王が倒れたとの噂を流したベルの大祭司らと結託して、発狂し指導力を失ったナブッコ王を幽閉し、王位を簒奪します。さらに、王位を絶対化するため、イスラエルの民とそれを逃がそうとしたフェネーナを処刑しようとまでします。
しかし、その計画はナブッコ王が正気に戻ったために頓挫し、加えてアビガイッレ自身が神罰で発狂してしまい、自ら毒をあおって許しを請いつつ絶命します。

イズマエーレ( テノール):イスラエル王ゼデキヤの甥

最後のイスラエル(南ユダ王国)の王ゼデキヤの甥で、フェネーナの恋人です。
彼はフェネーナを心から愛していたため、彼女がイスラエルとバビロニアの犠牲にならないよう、身を挺して彼女を救おうとします が、同胞のイスラエルの神官にそのことを咎められます。
ちなみに彼の叔父であるゼデキヤ王は、エルサレム陥落の際に両目をえぐられ、イスラエルの民と一緒に奴隷としてバビロンに連行されたとされています。 (ゼデキヤ王はオペラ「ナブッコ」には一切出てきません。)

ザッカーリア(バス): イスラエルの大祭司

王国亡き後のイスラエルの民を束ねているリーダー的存在で、旧約聖書で言う「預言者」(神の言葉を預かる者)です。
彼はエホヴァへの強い信仰心を盾に、バビロニア側のあらゆる脅しに対して全く動じようとしません。
また、ナブッコやバビロニアへの神罰、そしてイスラエルの民が解放されることを神からの預言として告げ、現にその通りオペラの話が進んでいきます。

ベルの大祭司(バス):バビロニアの最高位の神官

バビロニア古来の神ベルに仕える神官長で、自分の神に敵対するイスラエルの民とその信仰、さらにはそれに帰依するフェネーナを強く憎んでいます。
彼と配下のバビロニアの神官たちは、イスラエルの民とその信仰を抹殺したい一心で、ナブッコ王が戦場で倒れたとの噂を流すと共に、王位を狙うアビガイッレに近づき、イスラエルの民とフェネーナの処刑を進言します。

アブダッロ(テノール):ナブッコ王の老臣

ナブッコ王に仕える年老いた大臣で、ナブッコ王が発狂した当時はナブッコ王がさらに辱めを受けないよう、彼を幽閉することに賛同します。
しかし、王が正気に戻ったと分かると、喜んでナブッコ王に剣を渡し、ともに王位奪還のためアビガイッレ派と闘うようになります。
ちなみに、彼の声は(ナブッコ王やザッカーリアと並ぶような)威厳を出さないようにするため、ブッフォ・テノール(お笑い系の高音程のガラガラ声)で演じられるようです。

 

<ストーリーについて>
−「バビロン捕囚」と情愛が織りなす壮大なオペラ−

(はじめに)
オペラ「ナブッコ」の(版元である)リコルディ版では、オペラの「幕」(第1幕、第2幕・・・)のかわりに「部」(第1部、第2部・・・)が使われていますが、ここでは一般的なオペラの慣例に基づき「幕」と称しています。
 

(第1幕:エルサレム)

バビロニアの猛攻の前に陥落寸前のエルサレムのソロモン神殿でのことです。
イスラエルの民は迫り来るバビロニア軍に恐れをなして右往左往していますが、大祭司ザッカーリアはエホヴァへの信仰を促し、バビロニアの王女フェネーナが手中にあるといって皆を安心させます。
しかし、それもむなしくエルサレムは陥落し、ナブッコ王と一緒に攻め入ったアビガイッレはイスラエル王ゼデキヤの甥イズマエーレに自分の愛を受け入れるならエルサレムを救おうと言い寄りますが、彼は断固として断ります。
それならばと、アビガイッレはナブッコ王の反対にもかかわらず、エホヴァに帰依したフェネーナを反逆者としてその場で刺し殺そうとしますが、フェネーナを愛するイズマエーレが決死の覚悟で彼女をかばい、何とか殺されずにすみます。
ナブッコ王はフェネーナ救出を成し遂げると、イスラエルの神エホヴァを侮辱し、エルサレムの破壊とソロモン神殿からの略奪を宣言します。
 

(第2幕:背信者)

所は変わってバビロニア王宮、アビガイッレはフェネーナや捕虜として連行したイズマエーレ、ザッカーリアらイスラエルの民と共にナブッコ王に先駆けて帰国していました。
アビガイッレはそこで古文書を目にして、自分がナブッコ王と奴隷の娘であることと、フェネーナに王権を譲ろうとしていることを知り激怒します。
そこへベルの大祭司があらわれます。彼はフェネーナがイスラエルの民を逃がそうとしていることを告げ、(アビガイッレに王位が渡るよう)ナブッコ王が戦場で倒れたとの噂を流したので、アビガイッレに手を貸してほしいと頼みます。渡りに船とばかりにアビガイッレはこの計略に快諾します。
王宮の一室ではフェネーナがザッカーリアにエホヴァへの帰依を請い、またイズマエーレがイスラエルの神官からフェネーナをかばった咎めを受けますが、フェネーナはエホヴァに帰依したとこれをザッカーリアが諫めます。その直後に背後から喧噪が聞こえてきます。
そこへバビロニアの老臣アブダッロが割入って、フェネーナにナブッコ王が戦場で倒れたとの噂が流れ、アビガイッレが王位を継ぎ、イスラエルの民を根絶やしにするつもりだと言ってきます。
皆は一様に驚き、フェネーナは混乱の収拾のためにアビガイッレの元を訪れますが、アビガイッレは王冠(王位継承権)を渡すよう脅しをかけます。
そんな混乱の最中、ナブッコ王が帰還しますが、彼は噂への怒りのあまり、ベルやエホヴァも神ではなく、自分自身が神であることを宣言します。
その尊大ぶりに一同は驚きますが、そこへ雷鳴がとどろき、ナブッコ王は意識朦朧となり混乱状態となります。
ザッカーリアは預言通り神罰が下ったと言いますが、アビガイッレは転げ落ちたナブッコ王の王冠を取り上げ、自分の王位継承を告げます。
 

(第3幕:預言)


(バビロンの空中庭園(基礎部分)の遺跡:紀元前6〜7世紀頃)
「空中庭園」は新バビロニア王都バビロンの王城にあった豪華絢爛な庭園で、
ネブカドネザル2世が王妃アミティスを慰めるために建造したものと言われます。
広さは400m四方、高さは105mの人工の丘の上に幾層ものテラスを配した
多層構造で、遠くから見ると、天上からつり下げたような形に見えたことから、
「空中庭園」の名が付いたとされています。

バビロニア栄華の象徴とされる空中庭園で、イスラエルの民の抹殺と王位継承の仕上げにかかろうとするアビガイッレは、朦朧状態にあるナブッコ王を呼び出します。
そこで彼女はイスラエル人にエホヴァへの讃歌を歌うように言い渡しますが、それに逆上したナブッコ王はイスラエルの民を全て処刑する判決文に押印を捺印します。
アビガイッレは押印の捺印をもって、正式にイスラエルの民とそれに属したフェニーナの処刑を宣言し、さらに、もはや王としての威厳を失ったナブッコ王の廃位と幽閉をアブダッロや兵たちに命じました。ナブッコ王は廃位と愛娘のフェネーナの処刑まで言い渡されて衝撃を受けますが、全ては手遅れで無理矢理幽閉されてしまいます。

所は変わってユーフラテス川のほとりでは、イスラエルの民が鎖につながれ、奴隷労働にかり出されていました。
彼らは望郷の念に駆られ、「行けわが思いよ、金色の翼に乗って・・・」と祖国への思いと神への祈りを切々と歌います。
(以上の下線部は、今回演奏する合唱「行けわが思いよ、金色の翼に乗って」の部分です。)
その直後にザッカーリアがあらわれ、神の怒りがバビロニアの地に降りたこと、イスラエルの民の勇気が目覚めているとの預言を高らかに告げます。
イスラエルの民はその預言に勇気づけられます。
 

(第4幕:偶像破壊)

バビロンの王宮の一室で幽閉されているナブッコ王は、フェネーナが処刑のために連行される様子を目にします。
自分の愛娘が処刑されそうになっても何も出来ない自分の身を嘆いたナブッコ王は、ついに改心し、イスラエルの神エホヴァに跪いて許しを請います。
その甲斐あって、ナブッコ王は正気に戻り、元の王としての威厳を取り戻します。
そして、ナブッコ王は幽閉されている部屋の扉を自ら開け、正気に戻ったことを覚った老臣アブダッロやナブッコ王に忠実な兵士たちと共に、処刑場となっている空中庭園に向けて駆け出します。

さて、所は変わって、空中庭園では、いままさにフェネーナやザッカーリアなどイスラエルの民が処刑されようとしていましたが、そこに兵士たちの歓声と共にナブッコ王が登場し、王宮にそびえるベル神の偶像を破壊するよう兵士たちに命じます。
すると、ベル神の像はひとりでに崩れ落ち、皆は聖なる奇跡だと言って驚きます。
その様子を見届けたナブッコ王は、イスラエルの民の帰還を許すと同時に、自分が混乱から立ち直り改心したことや、今度はアビガイッレが逆に混乱して自ら毒を飲んだことを告げ、そのようなことを成し遂げたエホヴァの偉大さを讃えます。周りの一同もこれに賛同し、エホヴァを讃えます。

そこへ、毒を飲んで息も絶え絶えのアビガイッレが登場します。
今際の際にある彼女は、ナブッコ王にフェネーナとイズマエーレが愛し合っていることを告げ、王位を剥奪しようとしたり、フェネーナやイスラエルの民を処刑しようとした自分の罪を許してほしいと懇願しつつ、エホヴァに帰依するとの言葉を残して息絶えます。
ザッカーリアはナブッコ王を王の中の王と讃え、オペラは大団円を迎えます。
 

文・構成: 岩田 倫和(チェロ)

2005.11.6作成

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