(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」

−その3:交響的間奏曲について−

 


<交響的間奏曲の概要>

−悲劇を美しく彩る究極のアンチ・クライマックス−

美しい旋律で知られる「交響的間奏曲」は、映画「ゴッドファーザー Part III」などの映画音楽や、テレビ番組でも多用されてますので、おそらくこのオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」を知らない方もよくご存じかと思います。
 

−「交響的間奏曲」という曲名について−

この曲は、普通はただ単に「間奏曲」と呼ばれることが多いのですが、オペラの総譜では”Intermezzo Sinfonico”と記載されています。
Intermezzo”は日本語で「間奏曲」
(オペラの幕間に演奏される曲)、”Sinfonico”は「交響的」という形容詞で訳されます。
ですので、正式な楽譜やオペラを収録したCDやDVDでは、この曲を「交響的間奏曲」と称するのが一般的です。

ここで「交響的」というと、何か「交響曲」のような長大で壮大なスケールを思わせますが、実際には、きわめて小編成の管弦楽で静かに3分程度と短く演奏されます。

では何が「交響的」なのだと思われるでしょうが、これは”Sinfonico”の名詞形であるSinfonia”という言葉が「交響曲」という意味のほかに「(オーケストラのみで)独立して演奏できる管弦楽曲」という意味を含んでいるためです。
(”Sinfonia”はもともと「完全なる協和の響き」という意味のギリシャ語に由来する言葉です。)

つまり、このオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」では、この間奏曲が独唱や合唱などの声楽を伴なわない独立した管弦楽曲」だという意味で、”Intermezzo Sinfonico”という題名をつけていると考えられます。

そう考えて分かりやすく訳すと、この曲は「オーケストラのみで演奏される間奏曲」ということになります。

ちなみに全くの余談ですが、イタリア語で”Sinfonia”は「長ったらしい講演や談話」という意味もあることから、やはりイタリア人にも日本人の考える(長ったらしい)「交響曲」のイメージがあるのでしょう。

 

−「交響的間奏曲」が演奏される場面について−

交響的間奏曲は、前の項でも説明しましたように、不倫の事実が明白になって、まさに血なまぐさい決闘が行われようとする直前に演奏されます。

一見すると、非常に場違いな音楽ではありますが、これは「アンチ・クライマックス」(逆説的なクライマックス)とも言うべき一つの劇的手法でありまして、この静かな音楽をおくことによって、決闘への場面転換を強く印象づけるのと同時に、激しくも悲劇的な最後の味付けをより強くするための「隠し味」として用いているものと思われます。

また、この曲の旋律は、(オペラでは)前に演奏された「復活祭の合唱」で村人達が最初に聖堂の中(舞台裏)で歌った「天の元后よ、喜び給え・・・」(レジナ・チェリ)の旋律と同じであることから、改めてこの話が復活祭の日に起こった出来事であるということを回想させる意図もあると考えられます。

 

−付録:オペラ以外の「交響的間奏曲」の使われ方について−

この曲は先ほど述べたように、映画やテレビ番組でも用いられていることでも有名ですが、この中で私が知っている範囲でのオペラ以外での使われ方について、2つの作品の例で少し触れておきたいと思います。

映画「ゴッドファーザー PartIII」(アメリカ:1990年)

この作品こそオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「交響的間奏曲」をオペラを知らない人々にも広めた代表作といってもいいでしょう。
イタリア・シチリア島出身のマフィア、コルレオーネ一家の大ボスだったマイケルが家族と一緒に鑑賞していたオペラが「カヴァレリア・ルスティカーナ」であり、その最中にマイケルの愛する家族が暗殺者に射殺されます。さらに、その映画のラストシーンで、マイケルの最期の回想の時に演奏されるのが「交響的間奏曲」です。
名画「ゴッドファーザー」シリーズのネーム・バリューや、その余りに印象的な使われ方も手伝って、この映画の公開当初から「交響的間奏曲」の美しい旋律は大きく話題になり、それは現在まで語り草となっています。

このオペラと曲が映画に採用された理由としては、もちろん旋律の美しさがあったのでしょうが、それ以上に、マフィアの「本場」(現地の秘密結社が由来とされる)、コルレオーネ一家の出身地、そしてオペラの舞台が同じイタリア・シチリア島という共通点があり、また、オペラの内容が非常に(愛憎が激しいという意味で)イタリア的で、かつ「大切な人の死」という展開から、映画の内容にもマッチし、映画中最大の悲劇の暗示にもなっていることもあるのでしょう。
 

テレビアニメ「るろうに剣心」(日本:1996〜1998年)

このアニメは明治初期の東京を舞台とした流浪人の剣士・緋村剣心とそれを取り巻く人々の物語ですが、「交響的間奏曲」は主人公の緋村剣心が強敵・志士雄との命を賭した決戦を前に、大切な人(後に妻となるヒロインの神谷薫)との別れのシーンで、その一部が演奏されます。

オペラとアニメの舞台設定上の共通点は全くありませんが(ただし時代は10年ぐらいしか違わずかなり近い)、「決戦(決闘)の前の静けさ」というストーリー上の共通点が見られます。

・・・が、正直言いまして、ここで「交響的間奏曲」が採用されたのは、場面の雰囲気に合った美しい旋律が最大の理由でしょう。。。

文・構成: 岩田 倫和(チェロ)

2005.10.10作成

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