(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」

−その2:オペラの概要−

「カヴァレリア・ルスティカーナ」について>


男女の愛憎のもつれから生じた殺人事件ドキュメンタリー
 

青年期のピエトロ・マスカーニの写真
<作曲者> 
ピエトロ・マスカーニ
(1863-1945)

−激しく燃えたぎる感情そのままの台詞−
「ヴェリズモ・オペラ」の神髄は「ありのまま」を表現すること

「あいつらめ・・・恥を知れ・・・
オレは絶対に許さねぇぞ・・・
日暮れまでにやり返してやる。
オレは血が見てぇんだ・・・吹き出る怒りのままに。
俺の愛は全部憎しみに変わっちまったのだからな!」

(ローラの夫アルフィオが妻と青年トゥリッドゥとの不倫関係を知って、怒りのあまり飛び出した言葉)

歌劇(オペラ)「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、イタリア南部のシチリア島のある村で実際に起こった2組の男女の愛憎劇と、その結果起こった殺人事件を元に脚色・再構成された、「ヴェリズモ・オペラ」(ヴェリズモ=真実主義、現実主義の意)というドキュメンタリー的な内容のオペラとなっています。
(当団に無関係のこちらのホームページでは、その舞台となった場所が写真も交えて紹介されています。)

ただ、「ヴェリズモ」とか「ドキュメンタリー」とか言えば、ハイソな感じに聞こえますが、正直俗っぽく言えば「ワイドショー」ネタの単純なサスペンスドラマです。


で、その「単純な」ストーリーは?と言いますと・・・

あるカップルが男の軍役で別れ別れになってしまう。

その後お互いが別の男女と結ばれる。

しかし、元彼と元彼女が再びお互いに愛し合ってしまう。
(いわゆる不倫関係)

それを知った元彼の婚約者が、嫉妬に駆られて元彼女の夫に妻の不倫をしゃべる。

妻の不倫にキレた元彼女の夫が元彼を決闘で殺してしまう。


・・・という、何ともすごく分かりやすい愛憎劇となっていまして、正直、ストーリーだけを捉えれば、日本でテレビ放映されている2時間ものサスペンスドラマの方が、人間関係も複雑で、ドラマの展開もはるかに凝っています。

この単純な内容にマスカーニ美しくも激しい音楽が加わることによって、イタリア人の心を強烈に揺さぶる名作オペラになってしまったのです。
(ただ、そこには音楽の美しさと簡潔さもさることながら、この激しくも単純な愛憎劇の内容も、男女の恋愛のことになると何かと熱情的になるイタリア人の気質に合っていたのでしょう。 現にこの手のオペラはその後も次々と作曲され、前出のマスカーニの僚友ジャコモ・プッチーニも、この手の内容を扱ったオペラ「トスカ」を作曲しています。)
 

−「カヴァレリア・ルスティカーナ」の意味について−

このオペラの題名となっている「カヴァレリア・ルスティカーナ」とは、直訳すると「田舎の騎士道」と、少々いかつい名前になってしまいますが、 これは以下の2つの意味合いから、実際には「ご当地の習わし」という意味合い で考えるのが妥当でしょう

  1. 当地に伝わる中世の騎士道に基づき、軍役に行く前の彼氏が彼女に「永遠の貞節」を誓わせていた。
    (詳しくはこのページ(サントゥッツァのロマンツァの歌詞)で)
     

  2. オペラの内容そのもの(貞節の誓いや、それが破られた結果の不倫、決闘)が、その当時の 慣習や事件としてしばしば起こっていたことだった。
     

<登場人物について>
−愛憎関係が相互に絡んだ2組のカップル−

主な登場人物は以下の5人で、一番下のルチーアを除いて2組のカップルとなっています
悲劇の元となった不倫関係をオペラの始めから知っているのは、当事者(トゥリッドゥとローラ)以外はサントゥッツァのみです。

サントゥッツァ(ソプラノ またはメゾ・ソプラノ ):村の娘、トゥリッドゥの婚約者

このオペラの主役となっている女性で、トゥリッドゥが軍役から帰ってローラと別れてしまった後、トゥリッドゥの婚約者となります。
トゥリッドゥがローラと再び愛し合っていることを知ってしまった彼女は、 始めは黙っておこうと思ったものの、ローラやトゥリッドゥとの口論の後、悲しみと嫉妬のあまり、ローラの夫アルフィオにそのことを話してしま います。
そのことが、婚約者(トゥリッドゥ)と知り合い(アルフィオ)の憎しみ合いと決闘を引き起こし、そして婚約者の死という悲劇的な結末を迎えます。

トゥリッドゥ(テノール):村の青年、サントゥッツァの婚約者でローラの元彼

元はローラと愛し合っていた男性ですが、軍役中にローラが馬車屋のアルフィオと結婚したために分かれざるを得なくなり、かわりに同じ村のサントゥッツァと婚約します。
ところが、サントゥッツァと彼の仲を妬んだローラが彼を誘惑し、それに彼が見事にのってしまったことから悲劇が始まります。
最後には婚約者(サントゥッツァ)と知り合いで元彼女の夫(アルフィオ)を裏切った自責の念に駆られたまま、アルフィオとの絶望的な決闘に望み、命を絶たれてしまいます。

ローラ(メゾソプラノ):馬車屋アルフィオの妻、トゥリッドゥの元彼女

この女性は、元彼(トゥリッドゥ)に背いてほかの男(馬車屋のアルフィオ)と勝手に結婚したばかりか、元彼の幸せな婚約に嫉妬し、元彼を誘惑して不倫関係にしてしまったという、一連の悲劇の元凶を作った「悪女」です。
ローラは元彼の婚約者サントゥッツァに対して、(トゥリッドゥと自分の不倫関係のことをサントゥッツァが知っているのを承知の上で)皮肉を言ったりして彼女の嫉妬心を駆り立てますが、それが愛する者の死という最終的な悲劇への引き金となってしまいます。

アルフィオ(バリトン):馬車屋、ローラの夫

妻のローラを愛するよき夫として、妻と村の青年(トゥリッドゥ)との不倫を知らないまま陽気に歌いながら登場します。
ところが、トゥリッドゥの愛を失った悲しみとローラへの嫉妬に駆られたサントゥッツァが不倫のことを彼にしゃべったために、怒りと憎しみに燃えた彼は 、自分の妻の愛を奪ったトゥリッドゥを決闘の場で殺すこととなります。

ルチーア( アルト):居酒屋の女将、トゥリッドゥの母

青年トゥリッドゥの母親で、聖堂のそばで居酒屋を経営しています。
彼女もまたトゥリッドゥとローラの不倫を知らないまま登場しますが、悲しみにくれるサントゥッツァから不倫の事実を聞かされ、衝撃を受けます。
が、結局彼女は何もできないまま悲劇は進行します。
 

<ストーリーについて>
−神聖な復活祭の日に起こった愛憎劇と殺人−

(開幕前の前振り:復活祭の賑わいとトゥリッドゥ)

シチリア島のある村で起こったことです。
その日、村は年に一度の復活祭で皆が沸き返っていました。シチリアーナの浮き立つメロディが流れる中、村の青年トゥリッドゥは元彼女だった人妻のローラとの不倫関係を楽しむかのような歌を歌い出します。

(ルチーア、サントゥッツァ、アルフィオの登場)

そして、場所は変わって聖堂のある広場とそばにあるルチーアの居酒屋、そこへトゥリッドゥの不倫を知ったサントゥッツァが悲しみにくれながら登場します。
そこへ妻の不倫など全く知らないアルフィオが馬車屋の仕事から帰ってきます。
アルフィオは自分の家のそばでトゥリッドゥを見かけたとルチーアに告げると、ルチーアは息子は酒の仕入れに行ったので、そこには居ないはずと言おうとしましたが、サントゥッツァに遮られます。

(復活祭の合唱とサントゥッツァの悲しみの歌)

そうするうちに、聖堂の方で村の人々による復活祭を祝う合唱が始まり、いよいよ聖堂で復活祭の礼拝が行われようとしていました。サントゥッツァとルチーアもその盛大な合唱に加わります。
(以上の下線部は、今回演奏する復活祭の合唱「讃えよ、神は亡きにあらず」の部分です。)

しかし、合唱の直後にサントゥッツァはルチーアにトゥリッドゥとローラの不倫関係のことをしゃべってしまいます。
(以上の下線部は、今回演奏するサントゥッツァのロマンツァ「ママも知るとおり」の部分です。)
衝撃を受けるルチーアでしたがどうしようもありません。彼女にできることは、復活祭のミサの場で聖母マリアに無事を祈ることだけでした。

(サントゥッツァ、トゥリッドゥ、ローラの口論)

ルチーアが去った直後にトゥリッドゥが居酒屋の前に登場し、サントゥッツァとの間でその前の行動のことで、居るや居ないやの口論となります。
さらにそこへもう一人の当事者のローラが登場し、ついに三つどもえの口論となりますが、サントゥッツァを嘲笑するように皮肉を言いまくったローラが一人で聖堂に入ってしまいます。
そして、その場に残され、嫉妬で怒りの収まらないサントゥッツァと彼女の機嫌を損ねられて怒り心頭のトゥリッドゥは、ついにケンカとなってお互いに罵り合うはめとなり、サントゥッツァを突き飛ばしたトゥリッドゥは聖堂に入っていきます。

(サントゥッツァの暴露とアルフィオの怒り)

その直後、今度は再びアルフィオが登場するのですが、そこで嫉妬と怒りに狂ったサントゥッツァは、ついにアルフィオにローラとトゥリッドゥとの不倫関係のことを暴露してしまい、妻と仲間の青年の不倫に怒り狂ったアルフィオは復讐を誓います。
・・・悲劇へのお膳立てはついに全てそろったのです!

(トゥリッドゥとアルフィオの決闘−最後の悲劇)

そこへ、悲劇とは全く無縁であるかのように、天上の音楽を思わせるような短くも美しい間奏曲(今回演奏する交響的間奏曲が流れます。

そして、場面は変わって礼拝後の宴会の場となります。
その乾杯の場でトゥリッドゥとアルフィオは対峙し、感情を抑えつつお互いに抱き合ったその場でトゥリッドゥはアルフィオの右耳を噛みました。
・・・「ご当地の習わし」である決闘の合図です!
決闘での死を覚悟したトゥリッドゥは、母のルチーアに「ママ、あの酒は強いね・・・」と酔ったふりをして、今生の別れを告げるかのように悲痛な面持ちで語りかけます。そのただならぬ雰囲気にルチーアは困惑します。
そして、サントゥッツァやルチーアが見えないところで、アルフィオとトゥリッドゥの決闘が行われました。
そこに聞こえた離れた場所からの呻き声!
「トゥリッドゥが殺された!」という村の女達の叫び声がとどろく中、残された2人の女性の絶望的な叫びとともにこの悲劇の幕は閉じられます。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」ローマ初演時の最終場面の絵(トゥリッドゥの亡骸、それを抱きかかえるルチーア、駆け寄るサントゥッツァ、立ち去るアルフィオ)
(オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」ローマ初演時の最終場面の絵)
アルフィオとの決闘に負け、母ルチーアに抱きかかえられる亡きトゥリッドゥ、
その傍らにはナイフと帽子が落ちています。そして、その場へ駆け寄ろうとする
サントゥッツァと逆に立ち去ろうとするアルフィオの姿が描かれています。

叫び声で終わる台詞からは読み取れませんが、息子の非業の死を嘆く母親と
愛する婚約者の元に駆け寄ろうとする娘の嘆き、そしてその姿を後ろめたそうに
振り返りつつ妻の不倫の復讐を果たした勝者の姿がはっきりと描かれています。
しかし、当時のシチリア島ではこんな悲劇すら「よくあったこと」だったのです。

 

文・構成: 岩田 倫和(チェロ)

2005.9.27作成
(2005.11.1一部追加)

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