(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

交響詩「英雄の生涯」

−曲の概要(その3)−


交響詩「英雄の生涯」の管弦楽と編成>


特殊な楽器は出てこないが、管弦楽の難易度は作品中随一

 

交響詩「英雄の生涯」は、以下の「基本データ」の楽器編成で見るように、リヒャルト・シュトラウスの交響詩の中でも、楽器編成としては、割と基本的な楽器群のみで占められており(例えば『ツァラトゥストラはこう語った』で必要なパイプオルガン『ドン・キホーテ』で必要なウィンド・マシンのような)特殊楽器は必要ないものの、演奏に100人以上を要する大編成の管弦楽が必要となる。

その一方、特殊楽器による音響効果(効果音)が希薄になった分、管弦楽に求められる表現の幅は前作までに比べて格段に上がっており、第3節で超絶技巧を見せつける独奏ヴァイオリンだけでなく、最初の「英雄」の旋律に見られるような音程の上下差の激しい部分
(ホルンとチェロで 曲の最初の5秒間で3オクターブ近く跳躍する)や、金管楽器や弦楽器が物理的限界に近い高音で咆哮する部分、その逆に微妙な音程と音量が求められる室内楽的な編成で演奏する部分など、難易度的には(全体的に難しい)彼の作品中で特に難しい部類に入っている

曲の構成としては、前半部
(「英雄の戦場」まで)は、テンポも割と速く、壮大かつ激しい部分が多いのに対して、後半部(「英雄の平和貢献」以降)は、割とゆっくりとして穏やかな部分が多くなっている
そのため、下手をすると後半部が「だるい」印象を受けてしまうので、その後半部をいかに表情豊かに表現するかが一つのキーポイントとなる。

また、先で解説したように、この曲の第5節「英雄の平和貢献」では、リヒャルトの過去の作品からの引用旋律が数多くちりばめられており、リヒャルト・シュトラウスの作品を一通り知っていれば、「あの旋律は○○だな」とニンマリできるという、玄人
(クロウト)な楽しみもできる。(かなりの少数派だろうが・・・)

※ウィンド・マシン(風の効果音を生み出す「装置」)


(ウィンド・マシンの一例)

風の音を表現するための楽器・・・と言うより「装置」と言ってしまうのが適当である。
左の写真のように、表面がざらついたローラーを手で回し、ローラーの表面にある布を擦ることによって、摩擦音による「風の音」を表現するようにできている。
ローラーの回し方次第で強風や突風、風雪など、荒々しい風の音は自在に表現できるが、「そよ風」のように心地よい風の「感じ(体感)」は当然ながら表現できない。

リヒャルト・シュトラウスはこの「装置」を、「アルプス交響曲」におけるアルプスの「風雪の音」や、交響詩「ドン・キホーテ」における「(ドン・キホーテの妄想の中で)天馬が風切る音」の表現などで用いている。


<交響詩「英雄の生涯」の基本データ>

初   演 1899年3月3日 フランクフルト(ドイツの中核都市の一つ)にて
作曲者自身の指揮による。
演奏時間 約47分
 (第1節:約4分、第2節:約4分、第3節:約13分、第4節:約7分、第5節:約7分、第6節:約12分)
形  式 6つの節からなる交響詩
(ただし、楽譜上では明確な区分けはない)
第1節:英雄

(英雄の登場をホルンを中心とした管弦楽で勇ましく描く)
第2節:英雄の敵
(木管楽器を中心とした無秩序かつ鬱陶しい音楽)
第3節:英雄の伴侶
(独奏ヴァイオリンを中心とした性格描写とロマン派的な陶酔にあふれた音楽)
第4節:英雄の戦場
(金管楽器と打楽器が縦横無尽に活躍する曲中で一番激しい音楽)
第5節:英雄の平和貢献
(リヒャルト・シュトラウスの過去の作品の旋律がちりばめられた回想的音楽)
第6節:英雄の引退と仕事の完結
(独奏ヴァイオリンと穏やかな管弦楽が「英雄の生涯」の静かな幕引きを演出する)
オーケストラの
楽器編成
基本的に四管編成の大規模管弦楽
(管楽器名の横の数字は各楽器の必要数)

木管楽器群
(最低16名)
ピッコロ1、フルート3、オーボエ3、イングリッシュホルン1、Es管小クラリネット1、クラリネット2、バス・クラリネット1、ファゴット3、コントラファゴット1
金管楽器群
(最低18名)
トランペット5、ホルン8、トロンボーン3、テノールチューバ1、バス・チューバ1
弦楽器群
(64名)
ヴァイオリン2部(32名:うち1人は十分な技量を有する独奏者)、ヴィオラ(12名)、チェロ(12名)、コントラバス(8名)
打楽器群ほか
(最低7名)
ティンパニ、大太鼓、軍隊用中太鼓、小太鼓、シンバル、銅鑼、ハープ
(2台)


文・構成: 岩田 倫和
(チェロ)

2005.8.15作成

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