(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

ドビュッシー・小組曲
(アンリ・ビュッセルによる管弦楽編曲版)

−曲の概要(その2)−


小組曲(管弦楽版)の音楽をお聴きになりたい方へ>
こちらのページで、「小組曲」の項目から、MIDI形式で全3曲を聴くことができます
Midi Classicsさんの音楽データ集のドビュッシー音楽ページです。
上記のホームページは当団と一切関係ありません。)

小組曲の概要について>
−若き日のドビュッシーによる4曲のピアノ小品−
 

小組曲は、もともと4手ピアノ(2台のピアノと2人の奏者)用に作曲された、その名の通りの「小さな組曲」で、4つの小曲からなっています

そのうち、第1曲「小舟にて」第2曲「行列」の題名は、ドビュッシーが敬愛していたフランスを代表する詩人の一人、ポール・ヴェルレーヌ
(仏:1844-1896)の詩集「艶やかなる宴(雅な宴)」の中から取られたものといわれています。
(ちなみにドビュッシーが幼い頃、ドビュッシーの両親に対して音楽を学ばせるよう強く説得したのは、ヴェルレーヌの義母にあたる人でした。そのことからも並々ならぬ縁があるようです。)

また一方で、その詩集にある幻想が、「太陽王」ルイ14世当時のフランス古典主義にまでつながっていくとの見解から、古典的な旋律を持つ第3曲の「メヌエット」や、第4曲の「バレエ」がそれに関連して作曲されたともいわれています。
ちなみにルイ14世ドビュッシーと同郷の生まれであることや、メヌエットなどの舞曲の優れた踊り手で、かつ強力な擁護者であったことも、この後半2曲の作曲に関係していると思われます。

この4手ピアノ用の小組曲は、1889年3月1日、ドビュッシーがまだ26歳の頃に、あるサロンにて作曲者とジャック・デュラン(フランスの名門音楽出版社デュラン社の御曹司)の演奏で初演されています

そして、今回演奏される管弦楽版は、ドビュッシーの友人アンリ・ビュッセルにより、作曲者自身の監修のもと編曲されたものですが、これまた「小組曲」の名にふさわしく、基本的に小編成のオーケストラを対象とした曲となっています。
(ですので、当団でもこの曲に限って、管楽器や弦楽器の演奏者数を普段の半分ぐらいに絞った小編成で演奏いたします。)

ルイ14世の肖像画
フランス国王ルイ14世
(仏:1638-1715)
「太陽王」とも称され、フランス
ブルボン王朝の全盛期を
もたらす。彼は優れた踊り手
でもあり、当時は「田舎踊り」と
されたメヌエットなどの舞曲を
宮廷に持ち込み奨励した



アンリ・ビュッセルの写真
アンリ・ビュッセル
(仏:1872-1973)
小組曲の管弦楽編曲者。
本来は作曲家兼指揮者で、
ドビュッシーとは、オペラ
「ペレアスとメリザンド」の
合唱指揮を受け持ったことが
きっかけとなり、親交をもった。

 

<各小曲の概要>

小組曲各4曲は同じような三部形式(主部→中間部→主部の再現と終結)で、演奏時間も1曲につき3分程度の小曲となっています。
曲の形式や使われている旋律に際だった目新しさはないのですが、第4曲「バレエ」に特殊な音階が隠し味程度に使われていたり、曲の描写情景から、色彩豊かな「印象派」音楽の雰囲気が垣間見えたりするなど、後のドビュッシーの革新性を予感させる「小さな傑作」となっています。

第1曲: 小舟にて

小舟に寄ってくる河畔のさざ波を思わせるようなハープの分散和音(アルペジオ)に乗って、フルートが舟歌風(バッカロール)の主題を演奏し、木管楽器間でこれを繋げた後に、弦楽器が割合低い音で別の旋律を弾きます。
中間部の後半ではごく短い間だけ短調に転じて一瞬不安に駆られますが、それもすぐに転じて主題の再現で明るく締めくくられます。

第2曲: 行列

この曲も木管楽器が主体となって、子供達が飛び跳ねながら可愛らしく行進する情景が描かれています。
途中には子供達が騒ぎ出す様子なのでしょうか、旋律を繰り返しつつにぎやかに盛り上がる部分や、その逆に叙情的なまでに静かな部分が対比として現れます。
最後は、再び「可愛らしい行進」の主題がにぎやかに再現され、全曲の終わりを思わせるほど力強く締めくくられます。

第3曲: メヌエット

木管楽器の短い前奏の後にヴァイオリンで弾かれるこのメヌエットの旋律は、モーツァルトやハイドンが交響曲の中で用いたそれよりももっと古風でシンプルな感じをにおわせますが、その一方で、かつてルイ14世が好んで踊ったという宮廷舞曲の優雅さも感じさせます。
このような旋律を聴くと、本当にドビュッシーが自分より約200年前のルイ14世の優雅な治世に思いを馳せながら作曲したような気がします。

第4曲: バレエ

最初のうきうきするような主題は、「バレエ」(踊り)というより「馬車の行進」を思わせるような2拍子の音楽となっています。
穏やかに演奏される中間部は3拍子のワルツ(円舞曲)となっており、こちらの方が舞曲らしい感じをにおわせますが、この旋律は長続きせず、短い経過部を経てすぐに2拍子の主題部が再現され、これも(第2曲と同様に)主題の断片を繰り返しながら力強く締めくくられます。
この曲には、さりげなく古典的な教会旋法や全音音階など、後にドビュッシーが駆使する音階処理法が使われており、彼の後の作風をにおわせる部分があります。


 

文・構成: 岩田 倫和(チェロ)

2005.8.16作成

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