(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

チャイコフスキー・イタリア奇想曲

−曲の概要(その2)−


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(MIDI形式: 福澤ジャストミート諭吉様(データ作成者)のご厚意で転載)


イタリア奇想曲の形式>

この曲の題にある「奇想曲(カプリッチョ)」というのは、イタリア語で「(形式にとらわれず)気ままに」という意味から生じたもので、その意味の成すとおり、音楽形式上での意味も、愉快で気まぐれな小曲やそれらをつなぎ合わせたものという意味合いで使われています。
(古くは17世紀当時に書かれたあまり形式に束縛されないフーガ形式の楽曲のジャンルでありましたが、19世紀頃には、その意味が転じて、愉快で気まぐれな器楽小曲を指す言葉になりました。ピアノ曲では、メンデルスゾーンやブラームスらがこの題を使った名曲を残しています。)

イタリア奇想曲オーケストラを対象とした大規模な管弦楽曲で、器楽曲ではありませんが、「奇想曲」の名にふさわしく、愉快で気まぐれな旋律がちりばめられております

その構造を大まかに分けますと、以下の5つの部分から構成されており、勇壮なファンファーレとイタリアの民謡な舞曲を元にした4つの旋律で彩られています。

初演の期日楽器編成などこの曲に関する基本データこちら


1.第1部
(ファンファーレと2つの旋律)

最初は朗々としたトランペットのファンファーレで始まります。
これは、チャイコフスキーがローマに滞在していた時、滞在先のホテルに隣接していたイタリア騎兵隊の兵舎から毎夕聞こえていたラッパの音を元にしていると言われます。

その後、ファゴットと金管楽器による「♪タタタタン」3連符を主体としたリズム(このリズムはその後も曲の随所に出てきます)に乗って、ヴァイオリンやチェロの弦楽器がゆったりと演歌風のこぶしの利いた旋律<旋律1>を奏でます。

<旋律1>とファンファーレの再現が終わると、低弦楽器(チェロ&コントラバス)の伴奏に乗って、オーボエが小躍りしそうなのびやかな旋律<旋律2>を奏でます。
この<旋律2>はイタリア民謡「美しい娘さん」に由来するものと言われています。


2.第2部
(速く軽快な旋律を主体とした展開)

「♪タンタタタンタン・・・(以下繰り返し)」と中低弦楽器(第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)が刻む軽快なリズムに乗って、フルートと第1ヴァイオリンが速く軽快な導入旋律<旋律3>を演奏します。この旋律はさらに弦楽器全体が弾く軽快でなめらかに弾かれる本旋律<旋律4>(この旋律が曲中で一番有名な部分かもしれませんね)へと移り、タンブリンなどの打楽器も加わって盛り上がった後、あのこぶしの利いた<旋律1>が調を変えて再現されます。


3.第3部
(タランテラ舞曲)

<旋律1>の終末部分が徐々にスピードを上げた後に、そのまま突入する形で木管楽器が軽快なタランテラ舞曲<旋律5>を演奏します。
このタランテラ舞曲は、踊っているうちにヒートアップするかのように、進行するに合わせて情熱的かつにぎやかに演奏されます。

舞踏病の治療でタランテラを踊る若者(1877年)
<舞踏病の治療でタランテラを踊る若者>
1877年頃の様子 (The Lancet vol.364より)

(タランテラについて)

タランテラきわめて速い3拍子系の旋律で踊る活発な雰囲気の曲で、イタリア南部の有名な都市ナポリの舞曲です。
(なみにナポリは日本の都市に例えると、ちょうど「大阪」のような独特の地方色豊かな活気があります。同様に古都フィレンツェが「京都」、文化・芸術の中心ミラノは「東京」に例えられます。)

タランテラの語源は、ナポリと同じイタリア南部の都市タラントに由来するとも、毒グモのタランチュラ(かまれた後にこの舞曲を踊ると毒が消えるという伝説があった)に由来するとも言われています。
左絵参照:舞踏病の治療のため、管楽器とタンブリン(?)の伴奏でタランテラを踊る若者の姿が描かれています。→ もちろん現代医学の見地では、舞踏病はタランテラを踊って治るものではありません。)

タランテラ(tarantella)はあまりに速く、止めどのないような細かい動きを連想させることから、舞踏病(意志と関係なく体がけいれんのように細かく動いてしまう病気)を指す英語「tarantism(タランティズム)」の語源となっています。
(ただ舞踏病を指す英語は「chorea」の方がよく使われるようです。)


4.第4部
(第1部<旋律2>の再現)

第3部の熱狂からブレーキをかけるようにテンポがゆるまり、イタリア民謡を元にした第1部の<旋律2>が木管楽器、ホルン、弦楽器で大音量かつ高らかに演奏されます。


4.第5部
(タランテラ舞曲の再現とコーダ)

またもやテンポが速くなり、第3部の<旋律5>タランテラ舞曲が再現された後、最高速のテンポでコーダ(終結部)が演奏され、熱狂的な雰囲気の中で曲が締めくくられます。



イタリア奇想曲の基本データ>

以下にイタリア奇想曲に関する基本的なデータを載せます。

作  曲 1880年1月16日〜5月27日
初   演 1880年12月6日 モスクワで行われたロシア音楽協会の演奏会にて
演奏時間 約15分
形  式 4部構成の管弦楽曲
オーケストラの
楽器編成
管楽器名の横の数字は各楽器の必要数です。
また、( )内の楽器は曲によって奏者が持ち替える楽器です。

木管楽器群:
フルート3(ピッコロ1)、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット2、ファゴット2
金管楽器群:ホルン4、コルネット2、トランペット2、トロンボーン3、チューバ
弦楽器群:ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
打楽器群:ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、タンブリン、グロッケンシュピール
その他:ハープ


参考および写真出典:
作曲家別名曲解説ライブラリー8 (音楽之友社)
大作曲家の世界4 (音楽之友社)
新音楽辞典 (音楽之友社)
チャイコフスキー その作品と生涯 (新読書社)
クラシック音楽史大系11 (パンコンサーツ)
死因を辿る−大作曲家たちの精神病理のカルテ (講談社)
The Lancet vol.364, 2004

構成・文: 岩田倫和
(チェロ)

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