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<「ペレアスとメリザンド」の簡単な筋書き>
まずは、この組曲の基となった戯曲「ペレアスとメリザンド」の筋書きを最低限知って頂きたい範囲で、簡単に紹介します。
(原作者や登場人物などの原作戯曲に関する基本データはこちら)
舞台は(おそらく中世ヨーロッパの)深き森と海に挟まれた架空の国アルモンド。
その王城から離れた森の中で狩りをして、いつの間にか道に迷ってしまったアルモンド王族の中年男ゴローは、泉の近くで泣いていた謎の美少女メリザンドと出会い、政略結婚を考えていた祖父の老王アルケルの意に背いて、素性も分からぬその少女と結婚してしまいます。
ゴローの母ジュヌヴィエーヴや異父弟ペレアスの仲介もあり、無事に結婚を認められゴローと共に城に住むことになったメリザンドですが、そこで出会ったペレアスといろんな経緯を経て次第にお互いに惹かれ、相思相愛の仲となります。
それに薄々気付きだしたゴローは、先妻の遺児イニョルド少年を使い、ペレアスとメリザンド二人の密会の場を覗かせて、いよいよ不倫の仲かと怒りに燃え、ついには母国からの旅立ちの前でメリザンドとは別れる予定だったペレアスを、メリザンドとの別れの密会の場で刺し殺してしまいます。
その後、メリザンドは体が動かせないほどに弱り果て、ゴローとの子供を産んだあと、老王アルケルやゴロー、女中たちが見守る中、眠るように静かにこの世を去っていきます。
最後は老王アルケルの計らいにより、皆メリザンドの亡骸のある部屋を離れ、後に残ったのは物言わぬメリザンドと静寂だけでした・・・
簡単に紹介すればこんなものですが、全体的には幻想的な雰囲気を漂わせつつも、途中でいくつも悲劇的な結末を暗示するような出来事が起こったり、思わせぶりな台詞が出てくるなど、(一種抽象的ともとれましょうが)深読みすれば、かなり奥深い内容となっています。
(こういった摩訶不思議な面が、10年越しでこの戯曲のオペラを作曲したドビュッシーなど、この戯曲に関する音楽を作ってきた多くの有名な作曲家たちを惹き付けたのでしょう。)
このページに戯曲の内容を詳しく紹介しています。
「ペレアスとメリザンド」ストーリー紹介ページへ
<「ペレアスとメリザンド」組曲の形式>
この組曲に出てくる曲「前奏曲」「糸を紡ぐ女」「シシリエンヌ(シチリアーノ)」「メリザンドの死」は、全て戯曲各幕の「前奏曲(あるいは間奏曲)」です。
「前奏曲(間奏曲)」とは、各幕が始まる前にその場面(「ペレアスとメリザンド」組曲の「前奏曲」については戯曲全体)の雰囲気を予感させる音楽を演奏して観衆の気分を盛り立てようとするもので、それぞれが独立した管弦楽曲として数分程度で終わるように作られています。
つまり、それぞれの「前奏曲(あるいは間奏曲)」は、それらを組み合わせて「組曲」とするのに、ちょうどおあつらえ向きの構造となっているのです。
(初演の期日や楽器編成など組曲に関する基本データはこちら)
1.前奏曲
関西シティフィルハーモニー交響楽団
第35回定期演奏会の演奏より (「第35回定期演奏会ギャラリー」のページと同じものです。)
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(MP3形式:約5分、1.2MB)
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戯曲「ペレアスとメリザンド」が演じられる前に演奏される、まさに「前奏曲」(プレリュード)です。
(オペラなら「序曲」に当たります。)
この曲は戯曲全体の雰囲気を表すと共に、これ以降の前奏曲に影響を与える「主題(テーマ)」を提示しています。
これらを演奏順に紹介すると以下の通りで、全体的にテンポはゆっくりとして、穏やかな印象を与えますが、その中に悲劇的な運命(ペレアスとメリザンドの死)を予感させる不安な音色と(抑制はされてますが)盛り上がりも見え隠れしています。
(1) メリザンドを表す第1主題(ヴァイオリンが弱音器を付けて演奏)
旋律の美しさと、音色の弱々しさがメリザンドの「美人薄命」を暗示している。
(2) 「運命のテーマ」とも言われる第2主題(フルート、ファゴット、チェロが強奏)
ペレアスとメリザンドの悲劇的な運命を暗示している。
(3) 狩りをするゴローを示す(昔の狩猟ホルンを真似た)ホルンの単音演奏
第1幕第1場のゴローとメリザンドの出会いも表現している。
2.糸を紡ぐ女
関西シティフィルハーモニー交響楽団
第35回定期演奏会の演奏より (「第35回定期演奏会ギャラリー」のページと同じものです。)
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(MP3形式:約2分、0.7MB)
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第3幕第1場の前に演奏される曲です。
「糸を紡ぐ女」とは、ずばりメリザンド本人のことで、第3幕第1場でメリザンドが糸を紡ぐ場面を描いています。
戯曲ではメリザンドが糸を紡ぎながらペレアスやイニョルド少年と会話している場面が展開されますが、その会話の内容は、メリザンドの死を予感させるようなイニョルド少年の泣き言など、この戯曲の悲劇的な展開を何となく予告しているかのような、何気ない中にも不安が入り交じったものとなっています。
(ちなみに第3幕は死臭漂う王城地下の洞穴や、ペレアスとメリザンドの愛の交わりがゴローに露見し、ゴローにペレアスへの殺意が芽生えるなど、戯曲全体の起承転結の中で、劇的展開となる「転」の始めに当たる部分です。)
この曲自体は一見すると、ヴァイオリンやヴィオラが、糸を紡ぐ時に回る糸玉(または糸車)を細かい音形で表現し、その上をオーボエなどの木管楽器が緩やかで平和的な旋律を吹くという、のんびりした曲に聞こえます。
が、この曲の中間部では、調性が明るいト長調から、ほの暗いト短調に変化すると共に、「前奏曲」の主題の一つ「運命のテーマ」の変形旋律が演奏され、メリザンドの死の運命を何気なく表現するようになります。
3.シシリエンヌ(シチリアーノ)
関西シティフィルハーモニー交響楽団
第35回定期演奏会の演奏より (「第35回定期演奏会ギャラリー」のページと同じものです。)
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(MP3形式:約4分、0.8MB)
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第2幕第1場の前に演奏される曲で、フルートが主旋律を吹く曲としては、1,2を争うほど有名です。(「シチリアーノ」の名前で皆様もご存じかと思います。)
また、その有名な旋律が、なぜかこれまた有名なイギリス民謡「グリーンスリーブス」の旋律(リズム)に酷似しています。
曲の形式は、「糸を紡ぐ女」と同じで、典型的な3部形式(A-B-Aの変形
の3部分からなる曲)で、Aの部分は主にフルートがあの有名な主旋律を吹き、Bの部分は主にフルートなどの木管楽器の旋律と独奏チェロの裏旋律との掛け合いが美しく、最後はAの部分の変形パターンで締めくくられます。
この曲は前述のように、もともと他の戯曲の付随音楽であったものをそのまま流用したものなので、「シシリエンヌ」の曲名も音楽自体も「ペレアスとメリザンド」に関係しないと思われがちですが、実際戯曲の流れから考えると、全く違和感なく聴くことが出来ます。
それは、この後の第2幕第1場の場面が、幻想的な泉のほとりで明るく会話するペレアスとメリザンドを描いており、その導入として「シシリエンヌ」が曲の感じでジャストフィットしているからでしょう。
(現にドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」の同じ場面の前奏曲も、フルートとハープが主体で演奏するという、フォーレのものと似たような雰囲気を持つ繊細な曲風です。)
4.メリザンドの死(モルト・アダージョ)
関西シティフィルハーモニー交響楽団
第35回定期演奏会の演奏より (「第35回定期演奏会ギャラリー」のページと同じものです。)
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(MP3形式:約5分、1.1MB)
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第5幕第1場の前に演奏される、戯曲最後の曲です。
その名の通り、第5幕第2場で静かに死んでいくメリザンドを象徴し、葬送行進曲のような印象を受ける音楽です。
それは、あたかも肉体を離れたメリザンドの魂を迎える黄泉の国からの「お迎え」の雰囲気を醸し出しますが(ただし戯曲にそんなシーンはない)、同時に、最後のシーンである老王アルケルやゴロー、女中たちの退場、強いては、皆の悲しみと静寂と共に衰退していく黄昏の国アルモンドの「葬送行進曲」とも捉えることが出来ます。
曲の進行としては、以下のようになっております。
(1)
「シシリエンヌ」と同じくフルートが「葬送行進曲」の主題を演奏
(2) 第1ヴァイオリンにより「運命のテーマ」の変形主題が演奏される。
それを基に音楽が最大の盛り上がりを見せる。
(メリザンドの死を嘆くゴローの慟哭か?)
(3)
「葬送行進曲」の主題がもう一度演奏され、消えゆくように終わる。
(戯曲最後のシーン、メリザンド以外の出演者の退場を表現している?)
(ここからは私自身の感想になりますが・・・)
この曲は確かに旋律が美しく、全体的に静かな音楽で構成されてますので、まさに一人で静かに人生の幕を引く主人公メリザンドを描いた原作のイメージにぴったりなのですが、どうにも全体的に流れるように穏やかすぎて(ただ、よく聞くと結構ドラマ性に溢れてはいるんですが・・・)、正直何回聞いても、あまりに有名な「シシリエンヌ」以外は頭に残らない・・・
と言うのが正直な感想です。
要するに曲全体が地味な感じを与えてしまいがちで、初めて聴かれた方には印象に残りにくいのでしょう。
でも、よく聴けばメリザンドの運命をこれほど克明に描いている音楽は他にないと言うぐらいに良くできている曲です。
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