サクソフォーン

〜発明者の名前を冠した楽器〜

サクソフォーン(サックス)の一例:左からソプラノ、アルト、テナー、バリトンです。
<サクソフォーン(サックス)の一例>
左からソプラノアルトテナーバリトン(サックス)で、順に出せる音が低く、
楽器の大きさは大きくなります。


あまたある吹奏管楽器の中で、発明者が誰であるか、明確に言い切ることができるものはそう多くはありません、その数少ない例のひとつが、サクソフォーンです。世界で最もポピュラーな管楽器のひとつ、サクソフォーンを発明したのはベルギー出身の楽器製作者アドルフ・サックスです。つまり表題の通り、サクソフォーンはまさに、発明者の名前を冠した楽器なのです。

アドルフ・サックスは1814年に、楽器製作者のシャルル=ジョセフ・サックスの息子として生まれました。若い頃から父の工房で楽器制作に親しむ一方、ブリュッセル音楽院ではフルートとクラリネットの演奏を学びました。
記録に残るアドルフ最初の楽器は、1830年にブリュッセル産業博覧会に出展されたフルートとクラリネットです。

アドルフ・サックスがサクソフォーンを発明したのは1840年頃のことです。1842年にパリに進出したサックスはその後もこの楽器の改良を進め、1845年には完成、フランス歩兵連隊バンドに採用され、1846年には15年間有効の特許を取得しています。

サックスがサクソフォーンを発明するにいたった理由、目的については諸説がありますが、その一つに、オクターヴ上にオーバーブロウするクラリネットを作ろうとしていた、と言う説があります。直管の閉鎖管であるクラリネットは12度上の音(基音をドとすると、そのオクターヴ上のソ)にオーバーブロウするのです。したがって、オクターヴ上の音は、基音の倍音列の音と同じ指使いでは取ることができません。これを解決するためには、管を直管から円錐管にすればいいのです。そこで、加工しやすい金属で楽器本体を円錐管にし、生まれたのがサクソフォーンという訳です。サクソフォーンはオクターヴ上にオーバーブロウするので、クラリネットに比べて指使いが単純です(基本的に、直管で開放管のフルートと同じ指使いです)。

サクソフォーン発明の理由に関する第2の有力な説は、軍楽隊の楽器編成の中で手薄な中音域を補う楽器、あるいは金管楽器と(旋律楽器である)クラリネットの橋渡しをする楽器を作ろうとしていた、というものです。この説も、その後のサクソフォーン受容の歴史を見ると、なるほどと頷けるものです。

フランスの歩兵隊の音楽で初めて用いられて以来、サクソフォーンは(ドイツの影響下にある国を除く)多くの国の軍楽隊に取り入れられていきました。中でも最もよく用いられたのはサックスの故郷ベルギーと、最初に特許を取得したフランスです。これらの国では、少なくとも4管のサクソフォーンを導入して、温かい響きを生み出しています。イギリスではアルトとテナーの2管を配置することが普通でしたが、イギリスやアメリカでも近年サクソフォーンを数多く配置する傾向にあるようです。

なお、ドイツ圏では、サクソフォーンは長年の間、意図的に無視されました。そのせいか、1904年にリヒャルト・シュトラウスが《家庭交響曲》のためにサクソフォーン4重奏団を探したが、見つからなかったと言います。

軍楽隊以外では、J.P.スーザの吹奏楽団がアメリカでのサクソフォーン人気の発端を作りました。

アメリカと言えばジャズジャズと言えばサクソフォーンというイメージがありますが、ジャズの揺籃期、ニューオーリンズのジャズではサクソフォーンは用いられませんでした(別項参照)。サクソフォーンの魅力がジャズの世界で真価を発揮するのはジャズの中心がミシシッピ川を遡って、シカゴに移った頃(1920年頃)でした。ジャズマンたちはこの新しい楽器から新たな魅力をしぼり出させるために躍起になりました。スラップ・タンギングやアンブシュアを締め付けて出すスメアとかラフといった独特の奏法が生み出されます。

さて、オペラの世界では、フランスの作曲家は早くからサクソフォーンを用いています。1845年にはもうカストネルが《ユダヤ人最後の王》の中で用いています。その他、マイヤベーア、ビゼー、マスネ、トマらが効果的なソロパートをこの楽器のために書いています。

管弦楽曲や舞台音楽ではラヴェルの《ボレロ》、ムソルグスキー・ラヴェルの《展覧会の絵》、プロコフィエフの《キージェ中尉》《ロメオとジュリエット》などでサクソフォーンが用いられています。
そして、アメリカのガーシュインはジャズバンドの雰囲気を出すために、「パリのアメリカ人」も含めて)自作の中でサクソフォーンを効果的に用いています

我が国における最近のサクソフォーンブームに火を付けたのは、やはりチェッカーズ?ということで、チェッカーズは日本のスーザである、と結論付け、本稿の締めくくりといたします。




(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団

(アマチュアオーケストラ,大阪市)