(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)

ガーシュイン・「パリのアメリカ人」
−曲の概説−


関西シティフィルハーモニー交響楽団
第34回定期演奏会の演奏より
「第34回定期演奏会ギャラリー」のページと同じものです。)
 
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MP3形式:約18分、4.3MB)
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「パリのアメリカ人」作曲当時のジョージ・ガーシュインの写真
<作曲者>
ジョージ・ガーシュイン
(米:1898-1937)

「パリのアメリカ人」 作曲の沿革>

 生きていた当時の作曲家ジョージ・ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」(ピアノとバンドのために作曲されたジャズ風の狂詩曲)「アイ・ガット・リズム」(現在でも某有名スーパーや某国産自動車のCMでかかることの多い軽快なピアノ曲)、当時流行のブロードウェー・ミュージカルの数々など、ポピュラー音楽の世界で有名でした。

 (このページガーシュイン本人が「アイ・ガット・リズム」をピアノで弾く姿を見ることが出来ます
(要QuickTime Player)。)

  しかし、彼は元々ヨーロッパ系の古典管弦楽曲
(バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなど)を中心に学んでいたため、それらの音楽に対する並々ならぬ憧れがありました。
にも関わらず、ガーシュインがポピュラー音楽の作曲に偏重した(せざるを得なかった)のは、彼の裕福とは言い難かった生い立ち
(正統なクラシック音楽の勉強ができなかった)と、当時のアメリカの流行時代の趨勢(ポピュラー音楽やミュージカルの方が儲けやすかった)が大きく影響していたのです。

そして、1927年に彼はヨーロッパを旅行した際、フランスのモーリス・ラヴェルなど当時の有力管弦楽作曲家に面会し、教えを請おうとしましたが、もう既にポピュラー音楽で名を上げたガーシュインに、自らの管弦楽法(オーケストレーションともいい、ピアノ等で作った音楽の基本骨子(旋律・伴奏・リズムなど)を管弦楽化・・・つまりオーケストラ楽器に割り振っていく技術)まともに教えようとする者はいませんでした。

それでも、自らの手でフルオーケストラ用管弦楽曲を作曲してみたいと思ったガーシュインは、自分が(ほとんど独学で)学んできた管弦楽法を総動員し、自分だけの手で、初めて純粋なフルオーケストラ用管弦楽曲「パリのアメリカ人」を作曲したのです。
(ピアノ独奏をメインに置いた管弦楽曲である「ヘ調のピアノ協奏曲」は既に作曲・発表してました。)

この曲は彼が作曲した初めての管弦楽曲であるとともに、誰の依頼にも依らない初めての作品となったのです。(これまでの彼の作品は初期の習作を除いて、誰かの依頼で作曲されたものだった。)
 

「パリのアメリカ人」曲の形式>

主に3つの旋律を巧妙に組み合わせた管弦楽曲で、古典的な管弦楽曲の分類に当てはめると、「交響詩」(物語や伝説など、音楽に依らないテーマに基づいて作曲された管弦楽曲)と考えることができます。
交響詩形式に付き物の「テーマ」はまさにタイトルにもある通り、「パリ見物に来たアメリカ人の情景と感情」の描写です。
(ただ、ガーシュインは「単なる情景描写では無い」ということを、作曲当時しきりに言っておりましたが・・・その辺のセリフは交響曲第6番「田園」を作曲した当時のベートーヴェンとよく似ていますね。)

各旋律は
(当時のアメリカ音楽の代表とも言うべき)ジャズ音楽の影響を大きく受けており、一番最初に出る「フランス風(作曲者の弁)」の気楽な中にもエスプリの香りを漂わせる旋律を除いて、ブルース(緩やかなテンポの歌)スウィング系の旋律が主要な位置を占めております。
旋律以外のリズム部分も、ジャズ音楽のそれを模倣した部分が多数見られます。

おそらくガーシュインが管弦楽法以外に「ヨーロッパ」
(特に気に入っていたフランスの作曲家ドビュッシーの音楽)を目指して作曲したのは、和声法(旋律や伴奏同士の音を重ね合わせ、ある規則に従って進行させる技法)だと思われます。
現に、ジャズの旋律やリズムを取り入れつつ、その音の重ね合わせ(和音)には、フランス式の和声法
(特にドビュッシーやラヴェルの用いた、霧のかかったような効果を醸し出す和声法)に基づいたところが何カ所か見られます。

ちねみに、ガーシュイン本人は作曲完了時に「オーケストラのための詩曲」と名付けて、さらに「作曲および管弦楽化:ジョージ・ガーシュイン」と、わざわざ「自分自身で管弦楽化した!」ことを強調しています。
(実際、初演当時は「これは初演時の指揮者が管弦楽化したものだ!」と言う評論家もいました。)



「パリのアメリカ人」の基本データ>

以下にパリのアメリカ人に関する基本的なデータを載せます。

初   演 1928年12月2日
演奏時間 約18分
形  式 交響詩形式
(作曲者は「オーケストラのための詩曲」と銘打った。主に以下の3つの旋律を自由に組み合わせている。)
1.弦と木管楽器が軽快なステップをふむ「フランス風」の旋律
2.トランペットが緩慢に吹いて始まるブルース風の旋律
3.トランペットが軽快に吹いて始まるスウィング風の旋律
オーケストラの
楽器編成
(管楽器名の横の数字は各楽器の必要数です(1は省略)。)

木管楽器群:
ピッコロ
(フルート持ち替え)、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2
金管楽器群:トランペット3、ホルン4、トロンボーン3、チューバ
サックス楽器群:アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス
弦楽器群:ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
打楽器群:ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、木琴、鉄琴、トライアングル、ウッドブロック
その他:チェレスタ、タクシーフォン(車の警笛)4種


参考:
大作曲家 ガーシュイン(音楽之友社)
「パリのアメリカ人」総譜
(Warner Bros. Publications Inc.)


文:岩田倫和
(チェロ)

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