(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市)


関西シティフィル・ギャラリー
−第38回定期演奏会の映像−


<ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」第4楽章>
−冒頭部−
Windows Media形式:約5.5MB (演奏時間:2分54秒)


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ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」
第4楽章の最初の部分です。

この楽章もまた、これまでの交響曲にはなかった革新的な試みがなされています。
それは、この楽章が「変奏曲」の形式で書かれているということです。

「変奏曲」とは、最初に一つの短い主題旋律を提示し、その旋律を様々に変形して一つの曲とする形式のことで、古くから独立した器楽曲(ピアノ、オルガンなどの単一楽器で演奏する曲)や管弦楽曲としてよく用いられてきましたが、これまで交響曲で用いられることはありませんでした

ベートーヴェンはどういった経緯で「変奏曲」の形式をこの交響曲に導入したのかはよく分かりませんが、この楽章で用いた主題旋律から、彼の心中にはある「究極の英雄」の姿があったものと思われます

実は、嵐のように短い前奏の後に弦楽器のピッチカート
(指で弦をはじく演奏法)で提示されるこの楽章の主題旋律は、この交響曲のオリジナルではなく、彼のバレエ音楽「プロメテウスの創造物」の中から取られたものなのです。


神罰を受けるプロメテウス
(ギュスターヴ・モロー画)

プロメテウスとは、ギリシア神話に出てくる有名な神の一人で、その名前には先に(プロ)考える人(メテウス)という意味があります。
彼はギリシアの神々の専有物であった「火」を人間にもたらし、文明の礎を与えた「英雄」として語られていますが、そもそもその「人間」を創造したのがプロメテウス自身とされているのです。
(つまり、「プロメテウスの創造物」とは「人間」のことです。)

彼は人間を創造して、火をもたらした以外にも、全ての災いを1個の箱(有名な「パンドラの箱」)に封印して、人間に災いが降りかからないようするなど、人間を卑下していたギリシア神話の神々の中にあって、常に「先を考えて」人間寄りの立場を取ってきました

しかし、そのことがあだとなって、最後には主神ゼウスの怒りを買い、ギリシアの東の果てにある山脈(コーカサス山脈)に縛り付けられ、ハゲタカに自らの肝臓を生きながらにしてついばまれるという、長く苦しい罰を受けました。
(その罰は、プロメテウスがゼウスに有益な予言をするという交換条件のもと、別の「英雄」ヘラクレスによって解かれました。)

自分が絶対的な力を持つ神々の一員でありながら、苦しい罰を受けるのも辞さず人間達のために行動したこのプロメテウスこそ、ベートーヴェンにとっては「究極の英雄」だったのでしょう。
(しかも神話ですから、ナポレオンのように現世の地位におぼれて醜さを露出することがないことも、彼にとっては文字通り「神格化」しやすい「英雄」だったのでしょう。)

この「プロメテウスの主題」をこの「英雄」交響曲のフィナーレ(第4楽章)に用いたところから、彼の描きたかった「英雄像」の一端が伺えますね。

 

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<文> 岩田 倫和 (チェロ)