J.F.ペレノー賞について、スルジッチ先生にインタビューしました。

 先生のプロフィールにあります、ウィーン国際指揮者コンクールについてお聞かせ下さい。これは毎年開かれるコンクールなのでしょうか?

 いいえ、3年に一度です。私がコンクールを受けたのは1994年のことです。スイスのJ.F.ペレノー基金によるコンクールで、正確には覚えていませんが、それほど古く設立されたものではなかったと思います。

 どれくらいの人たちがこのコンクールに応募したのですか?

 正確にはわかりませんが、200人以上だと思います。このコンクールの最初の3ステージは録音テープによって審査されます。応募者は、古典、ロマン派、そして20世紀の曲を録音して送るのです。そして、そこで選ばれた人たちがウィーンに集まるのですが、このときには32名に絞り込まれていました。

 スルジッチ先生はどのような録音を送られたのですか?

 古典としては、モーツァルトのGマイナーロマン派ではチャイコフスキーの交響曲第4番20世紀の曲バルトークのオーケストラのための協奏曲を選びました。

 それは新たに録音したものですか?

 いいえ、過去に録音したものの中でベストと思われるものを選びました。モーツァルトグラーツ室内オーケストラチャイコフスキーザグレブ放送交響楽団、バルトークは???

 で、コンクール会場ではどこのオーケストラを振られたのですか?

 ウィーン・シンフォニー・オーケストラです。

 演奏された曲目は?

 J.F.ペレノー氏のご一族の中に作曲家の方がいらして、その方の曲を演奏しました。

 そして、スルジッチ先生が見事ペレノー賞をとられたわけですね。

 そうです、私ともうひとり、サンクト・ペテルブルクから来られた方の2名が賞をいただきました。

 最終ステージでの演奏の出来はいかがなものだったのでしょう?

 完璧だったと思います。最後まで集中して、全くのノー・ミスでした。わたしは幸運であったと思います。コンクールではミスを犯した分、減点されますので、だれも私を越えることはできませんでした。つまり、その時に最も集中していた人間が賞を取ったということです。ですから、賞を取ったから芸術家として優れている証にはならないと思います。

 具体的にはどのようなことでしょう?

 偉大な芸術家ほどコンクールの場ではプレッシャーも大きくなりますし、賞をとった人よりとらなかった人の方がよい演奏をすることもあるのです。それにミスを犯さないことよりも重要なことは多いでしょう。指揮者は芸術を創造しているのですから、まず、聴衆の方々に喜んでいただかなくてはいけませんし、コンピュータのように単調に演奏するのでは、これはもう芸術とは言えないでしょう。

 スルジッチ先生がこのコンクールを受ける決断をされた理由は何でしょうか?

 私は個人的にはコンクールは好みませんそれでもこのコンクールを受ける気になったのは、ひとつには、年齢制限の問題があります。多くのコンクールは年齢制限が25歳程度と、低く設定さえていますが、このコンクールでは45歳まで応募が可能だったのです。もう一つは、このコンクールの大部分がテープにより審査されるということです。これですと過度の緊張を味わうこともありませんし、過去の演奏の中で自分が納得したものを聞いてもらうことが可能だからです。

 最近、日本の音楽家の方で国際コンクールを受けられる方が多くなっていますが?

 コンクール入賞が証明できるのは「よい」演奏家だ、ということです。「偉大な」演奏家かどうかはまた別の話だと思います。ただ、これは私の個人的な意見です。私にはプレッシャーに最も強い演奏家が最高の演奏家なのかどうかは分かりません。ただ、コンクールにまさる、もっといい方法があるか、といえばないのも事実です。こんな風に言えるのも、私が幸運にもペレノー賞を受賞できたからでしょうね。

 ありがとうございました。

     (1999年12月25日、インタビュアー:川井裕史(2ndヴァイオリン))